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逆さの砂時計
Side Story
アンサンブルを始めよう 1
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させられる。

「珍しく寝坊したせいで、弱気になっているのでしょうか?」

 宛先がない問いかけに唇の両端を持ち上げ、頭を振って前進する。

 ここから更に東へ一時間歩いた先で、再度ロザリアと合流する予定だ。
 朝食は本当に軽い物しか用意できなかったし。
 昼食は腹持ちが良い、しっかりした物を、早めに作ってあげたい。
 私には、立ち止まっている余裕などないのだ。

「急ぎましょうかね」

 私が作った料理を大切に、時には嬉しそうに、幸せそうに食べてくれる、彼女の無邪気な笑顔が見たい。
 毎食後、律義に必ず添えられる「ありがとう」が聴きたい。
 彼女と過ごせる、人生最後の幸福期。
 一秒たりとも無駄にはしたくない。

 したくはない……の、だが。

 待ち合わせ場所の湖畔。
 立ち並ぶ木々の中でも一際目立つ大木に、背中を預けて立っていたのは。
 殺気に近いものを放ち、腕を組んで「むう」とか「くそぅ」とか零してるうつむき気味なロザリア。帽子のつばで顔が半分隠れてるせいもあってか、彼女の周辺だけが酷く剣呑な雰囲気になっている。
 時々、苛立ちを抑えきれない様子で地面を蹴ってるんだけど……
 今、近寄っても大丈夫なのだろうか?
 そんなクソ面倒くさいコト、実際にやってられるか! と見送られていた往復平手打ち千発が、ついに実行される?

「なあ、クロスツェル」

 ふと顔を上げたロザリアが、投石してもギリギリ届かないであろう距離で立ち尽くす私に向けて、()()()()()()声音を放つ。
 どうやら、怒りの矛先は私ではないらしい。
 木の陰に隠れている必要はなさそうだ。
 良かった。

「どうしたんですか?」
「お前、とりあえず猪の姉ちゃ……じゃない、プリシラ? だっけ? に、会いに行くっつってたけどさ。ソレ、後回しでも良いか?」
「できれば顔を合わせたくないので彼女にも通じる正当な理由があるのなら私としては引き伸ばしも後回しも大歓迎です、お好きなだけどうぞ」
「……本当にあの二人が苦手なんだな、お前……。まあそりゃ、寝てる間にあんなコトされてたら、普通は」
「その記憶はルグレットさんに跡形も残さず全部消してもらってください。良いですね?」
「ふぇっ?? い、ぃや、えと! ごめんなさい??」

 顔を間近で覗き込んだ途端。
 涙目になったロザリアが、自らの両肩を掻き抱いた。

 そんな、小動物みたいに全身でぴるぴる震えなくても……。
 べゼドラといい、アーレストといい、ロザリアといい。
 私の真顔は、そんなに怖いのだろうか?

 いつもだったら不意に近付いてしまっても、赤くなるか、睨むか、両手で顔を押し退けようとするか、なのに。
 ここ
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