暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
アンサンブルを始めよう
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について、突っ込んで良いものなのかどうか。悩ましい。
 ロザリアがいつ目を覚ますか判らないからか、殿下の指摘を受けたレゾネクトが大人しく男性の姿に戻った。見慣れた姿に、私も安堵の息を吐く。彼が彼の姿であれば、ロザリアが気絶し直す心配も無い。多分。
 「結界はどうなってますか?」
 解放された声でレゾネクトに状況を確認すると、彼は辺りを見回して何かを探り出した。
 「……ああ、ロザリアが張り替えるつもりだったのか。俺が代わりに閉じておこう。東と西を繋ぎ、里の周辺を歪曲させた多重空間で円状に囲んでおけば良いのだろう?」
 「世界への影響は?」
 「無い」
 「では、お願いします。終わり次第、全員で場所を移りましょう。リーシェとロザリアをこのままにしておくのは忍びないので」
 「あ……」
 帽子を拾い、ロザリアを抱えて立ち上がった私を見て、リーシェが気まずそうに後退る。種族が違っても男性は怖いのか、顔色が下降気味だ。それに気付いたらしいフィレスさんが歩み寄り、自身の上着から取り出した手拭いでリーシェの顔を優しく拭う。
 「んじゃ、行き先はアルスエルナの中央教会、次期大司教サマの執務室で」
 「え。」
 想像してなかった殿下の提案に、体が硬直する。
 折角遠退いたのに……
 「何故、中央教会へ? 私達人間だけでならまだ解りますが、リーシェやロザリア達は」
 「宗教方面で大混乱になってる現代、アンタ達に迂闊な言動で存在を匂わされたら、俺達統治者側も大いに困るんでな。予想外の展開を防止する為にも、アンタ達の行動はコッチでもある程度把握しておきたい。その為には、情報を制御できる高位且つ無欲な人間との連携が必要なんだよ。俺が知る限り、あいつ以上の適任者は居ない……っと。……そうか、アンタも「生贄」……」
 私を見る殿下の目に生温い温度が雑じった。居た堪れなくなって視線を逸らすが……はたと気付いて静止する。「生贄」の意味を理解できる人間は、彼女の洗礼を受けた者だけだ。それはつまり
 「……殿下も、ですか」
 そろりと持ち上げた視界。殿下の目に「諦め」が宿る瞬間を、私は見逃さなかった。
 「ははははは。寄らば大樹の陰だ。観念しろー」
 「ふ、ふふふ。ニゲナイデクダサイネ、デンカ」
 彼女、本当にアルスエルナ王国の支配者になるつもりか? 権力者(おうぞく)にまで手を伸ばしていたとか……もう、彼女を止められる立場の人間は国王陛下しか思い当たらない。けれど、陛下であってもアリア信仰は不可侵領域の筈。
 悪夢だ。
 「終わったが。中央教会で良いのか?」
 「おー。よろしくー」
 レゾネクトの言葉を合図に、フィレスさんが手拭いを預けたリーシェと手を繋ぎ、殿下が私の隣に並ぶ。逃げ場は無い。
 虚ろな目に映る景色が、緑豊かな大自然から真っ白
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