Side Story
アンサンブルを始めよう 1
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整え。
軽くなった掛け布団をめくって、上半身を起こす。
紺色のカーテンを開いて覗くガラス窓の向こうは、透き通るような青空。
石造りの建物が所狭しと建ち並んだ大きな街は、行き交う人々の話し声や馬車が駆け抜ける音などで、今日も非常に賑やかだ。
加えて、夜明けを告げる鳥の気配がほとんどない。
朝には違いないが、どちらかといえば昼に近い頃合いか。
こんな時間まで寝入るなんて、ロザリアとの旅の中では初めてだ。
要するに。
「いつもと違う私を心配して、慌てて様子を見にきてくださったのですね。ありがとうございます、ロザリア」
私の生命力……寿命は、既に先が見えている。
いつどこで、何があっても、おかしくはない。
彼女はそれを恐れていて、時折、分かりやすいようなそうでないような、微妙な気遣いを見せてくれる。
寝坊した分のデコピンを免除したのも、わざわざ(作業の負担が少ない)軽めの物で良いと言ったのも、不安と安心がない交ぜになった結果だろう。
今回は、単純に昨日の疲労が原因だと思うが。
申し訳ないことをしてしまった。
「すぐに行きますね」
ロザリアが聴いている前提で言葉を残し。
ベッドを降りて即、部屋を引き払う準備に入る。
とはいえ、宿に持ち込んだ荷物は一日分の飲食代と宿泊費、渡国許可証と入街許可証を詰めた革袋一つだけ。
梳いた髪を首筋で一つに束ね、備え付けの寝間着から、普段着ている服に着替えれば、出立の支度は完了だ。
他の金銭や非常食などはすべて、盗難防止の為、私に何かあった時の為、彼女の結界内に預けてある。
身軽さを得られた分、助かってはいるのだけど。
倉庫代わりに使ってる感は否定できない。
すみません、ロザリア。
街を出て東へ十分ほど移動したところにある森の中で、結界内に招かれ。
考えごとをしていたのか、ほとんど喋らないロザリアに朝食を振る舞い。
食器類の片付けを終えてから、人通りが多い一本道の手前へ送り出され。
以前はリースやべゼドラと共に訪れた関所を、今度は一人で潜り抜ける。
昼間でもやはり盛況だった、石造りのひょうたん型建築物から一歩外へと踏み出せば、そこはもう、アルスエルナ王国の領土内。
愚かな私を拾い上げ、慈しみ育ててくれた故郷だ。
年単位で離れていたわけでもないのに、こうして無事に帰国できた事実が感慨深い。
……バーデルへ入国した時も思ったが……。
所詮は、人間が敷いた境界線の上を行き来しているだけ。
それだけのことに気持ちを左右されている自分は、彼女とは違う。
どうしようもなく人間なのだと、改めて再認識
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