Side Story
アンサンブルを始めよう
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「いつもとは違う私を心配してくださったのですね。ありがとうございます、ロザリア」
私の生命力は先が見えている。いつ、何処で、何があってもおかしくはない。
彼女はそれを恐れているのか、時折、分かり易いようなそうでないような気遣いを見せてくれる。寝坊分のデコピンを免除したのも、わざわざ(作業負担が少ない)軽めの物で良いと言い残したのも、不安と安心が綯い交ぜになった結果だろう。今回は単純に昨日の疲労が原因だと思うが……申し訳ない事をしてしまった。
「直ぐに行きます」
ロザリアが聴いている前提で言葉を残し、ベッドを降りて即、引き払う準備に入る。
と言っても、宿に持ち込んだ荷物は一日分の飲食代と宿泊費、渡国許可証と入街許可証を詰めた革袋一つだけ。梳いた髪を首の後ろで一つに束ね、備え付けの寝間着から普段着ている服に着替えれば支度は終了だ。他の金銭や非常食等は総て、盗難防止の為、私に何かあった時の為、彼女の結界内に預けてある。
身軽さを得られた分、助かってはいるのだけど……倉庫代わりに使ってる感は否定できない。
すみません、ロザリア。
街から東へ十分程移動した所に在る森の中で、考え事でもしていたのか殆ど喋らないロザリアに朝食を振る舞い、人通りが多い一本道の手前で再度別れ、以前はべゼドラ達と共に訪れた役所を一人で潜り抜ける。
昼間でもやはり盛況だった石造りの瓢箪型一層建築物を一歩外へ踏み出せば、其処はもうアルスエルナ王国の領土内。愚かな私を拾い上げ、慈しみ育ててくれた故郷だ。年単位で離れていた訳でもないのに、こうして無事帰国できた事実が感慨深い。
……バーデルへ入国した時も思ったが……所詮は人間が敷いた境界線の上を行き来してるだけ。それだけの事に気持ちを左右されている自分は「彼女とは違う」。どうしようもなく人間なのだと再認識させられる。
「……珍しく寝坊した所為で、弱気になってるんでしょうか?」
宛先が無い問い掛けに唇の両端を持ち上げ、頭を振って前進する。
此処から更に東へ一時間歩いた先で、もう一度ロザリアと合流する予定だ。朝食は本当に軽い物しか用意できなかったし、昼食はしっかりした物を早めに作ってあげたい。私に立ち止まっている余裕など無いのだ。
「急ぎましょうかね」
私が作った料理を一口一口大切に、時には嬉しそうに幸せそうに食べてくれる彼女の笑顔が見たい。毎食後律義に添えられる「ありがとう」が聴きたい。
彼女と過ごせる人生最後の幸福期。一秒たりとも無駄にはしたくない。
したくない、の、だが。
待ち合わせ場所の湖畔。立ち並ぶ木々の中でも一際目立つ大木に背中を預けて立っていたのは、殺気に近いものを放ちつつ腕を組んで むう とか くそぅ とか零してる俯
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