Side Story
インナモラーティは筋書きをなぞるのか
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商人達が運び入れる燃料を如何に巧く活用できるかが、北方を預かる各領主の腕の見せ所だったりする。
この街では深夜の不要不急な外出を条例で規制し、経済と防衛の主な活動領域だけを一晩中ぽつぽつと丸い灯りで照らしてる。当然、現在二人で歩いてる裏路地や水路脇には星と月の明かりしか射してない。仕方がない話ではあるが、いつ・何処からでも好きなだけ掛かって来なさい、不審者さん! といった様相だ。
「アーレストさん、失神寸前の病人も驚く酷い顔色になってましたが」
「二人揃って抱えてる事情がアレだからなぁ……。けど、互いに妙な親和性を感じてるみたいだし、彼女の精神は現代人よりずっと強い。問題は無いだろ」
親和性? 先日のアーレストさんの涙と、先程のマリアさんの言葉か。
マリアさんに懐かしさを感じたらしいアーレストさんと、彼を見ていると大切な人達を思い出すと言ったマリアさん。
二人が生まれ育った時代には数千年分の隔たりがある上、マリアさんは私が川で結晶を拾うまで殆ど幽霊状態だった。接点など皆無に等しい筈だが、何かしらの繋がりがあるとしたら……コーネリアさんとウェルスさん、だろうか?
アルフリードさんの仲間になった時点で、あの夫婦には既に子供が二人もいた。神々と魔王が姿を消した後の行方は知れないが、片方、若しくは二人共無事に生き延びていたとして、アーレストさんはその子孫だったり、とか。
コーネリアさんとアーレストさんは共に金髪金目で、不思議な力を発揮する歌と音楽の共通点も有るし。それならマリアさんは、彼らの子孫にかつての仲間の面影を見出した、とも考えられる。
ただ、この場合アーレストさんが感じた懐かしさは説明できないな。聴いた限り、子供達とマリアさんに面識は無さそうだったし、会っていたとしても数千年前の繋がりが人間側に残ってるとは思えない。
子孫説は当たらずとも遠からずな気がするのだけど。
「それより、フィレス」
「はい」
石造りの水路をさらさら流れる生活用水を横目に、両手を広げて五段程度の低い階段をひょいっと飛び降りる師範。首筋で一つに纏めた長い金髪が宙を泳ぎ、その内の数本が右から左へ真横に靡いた。靴裏と地面が接触すると同時に、右横の狭く真っ黒い建物の隙間から何かが倒れたような物音が聞こえる。
うん。物が壊れたような音でなくて良かった。
「お前、今は死因も普通の人間と変わらないんだよな?」
「ええ。飲食を断てば衰弱で死にますし、致命傷を与えられれば勿論死にます。出血多量でも、まず助からないでしょう。万が一死病を罹患した場合も同様かと」
倒れたらしい何かには一瞥もくれず歩いて行くと、今度は頭上から大きな皮袋が降って来た。歩調を速めて躱してみれば、私の背後でズドンッ、バラバラバラ! と、けたたましい音を立て
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