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逆さの砂時計
Side Story
インナモラーティは筋書きをなぞるのか 1
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爵として自警団に所属してるお前までが消えたら、もっと大事(おおごと)になるだろうが」

 …………あ、そうか。
 不可解な出来事に遭遇したせいで一時的に離脱してはいたが。
 私は元々、領土内の失踪事件を追ってたんだ。

 休暇を申請してあるとは言っても、怪奇現象(レゾネクト)が相手ではいつ解決できるか分からなかったし。
 失踪事件を担当する騎士が長期間行方不明となれば、事件を知る領民達に余計な不安を根付かせてしまう。

 しかし、師範達の護衛に就いているのであれば。
 たとえ私がレゾネクトに殺されたとしても、賊や敵対勢力などから王国の要人を護って命を落としたのだと、それらしい理由で誤魔化せる。

 師範の嘘は、私の為じゃない。
 領民達への配慮だ。
 こんな深夜に外出するのも、なんらかの気遣いか。

「……っ ありがとうございます……!」

 常に冷静な視点で、大局を見ながら些事(さじ)に気を配って行動する。

 やはり、師範は素晴らしい。
 この方にお会いできて良かったと、心から思える。
 この方に追い着きたい、とも。

「待って」

 気持ちの昂りを感じながら、鞘付きのナイフを腰帯に備えて上着を纏い。
 扉を開いた師範の後に続こうとして、マリアさんに呼び止められた。

「普通に行っても、彼らは招いてくれないと思うわ。手伝いましょうか?」

 おや。
 マリアさんには師範の行き先が判るのか。
 普通に行っても招いてくれない場所とは?

「いえ、結構。相手が相手だけに、立場上貴女は居合わせないほうが良い。それに、道中はフィレスと二人で話したいので」
「話? 私にですか?」
「ああ。ちょっとした確認だ」
「っ、待ちなさい、ソレスタ! アンタ、教会の業務を投げ出すつもり??」

 今の今まで凍り付いてたアーレストさんが、急に動き出した。
 光の速さで師範の傍らに立ち、取っ手を掴んでないほうの手首を握る。

 アーレストさんも、時々超人的な動きをするな。
 師範並みか、あるいは師範以上に鍛えてる?
 反戦主義のアリア信仰に席を置く聖職者なのに?

「人聞きが悪いぞおー。主神に関わる真相の探求と証明も、聖職者の立派なお役目だろ? 業務は本来一人でもこなせる量だし、超・優秀な教師であるお前になら全部任せちゃっても安心だ。違うかね? 新米神父の世話係君」
「ふざけんじゃないわよ! 何の為にこの私が派遣されたと思ってるの?? アンタを見す見す危険な場所へ送り出すわけがないでしょうが!」
「なら、お前が行くか? 今の二人はお前が最も苦手とする人種の筈だが。そうと分かってて、冷静に対応できるのか?」
「?? そ……っ……、れは……」
「無理だろ。話を聴いただけで固まって
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