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逆さの砂時計
Side Story
インナモラーティは筋書きをなぞるのか
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っても入れてくれないと思うわ。手伝いましょうか」
 おや。マリアさんには師範の行き先が判るのか。普通に行っても入れない場所とは……?
 「いえ、結構。相手が相手だけに、立場上貴女は居合わせないほうが良い。それに、道中はフィレスと二人で話したいので」
 話?
 「っちょっと待ちなさい、ソレスタ! アンタ、教会の業務を投げ出すつもり!?」
 今の今まで凍り付いてたアーレストさんが急に動き出した。光の速さで師範の傍らに立ち、取っ手を掴んでないほうの手首を握る。
 ……アーレストさんも時々超人的な動きをするな。師範並みか、或いは師範以上に鍛えてる?
 聖職者なのに?
 「人聞きが悪いぞぉー。主神に関わる真相の探求と証明も聖職者の役目だろ。業務は本来一人でも熟せる程度の量だし、優秀な教師であるお前にならぜーんぶ任せちゃっても安心だ。違うかね? 新米神父の世話役君」
 「ふざけんじゃないわよ、このバカッ! 何の為に私が派遣されたと思ってるの!? アンタを見す見す危険な場所へ送り出すワケないでしょうが!」
 「なら、お前が行くか? 今の二人は、お前が最も苦手とする人種の筈だが。そうと分かってて冷静に対応できるのか?」
 「!! そ……っ……、れは……」
 「無理だろ。彼女の話を聴いただけで固まってるお前じゃ何もできん。倫理に則った怒りをぶつけることも、寄り添って心を安らげることも」
 ぐっと言葉を詰まらせたアーレストさんからマリアさんへ視線を移し、もう一度アーレストさんを見た師範が、今度は私を見て小さく笑う。
 「コイツ、小さい頃に性的な意味で男から暴行されそうになってな」
 「「「は?」」」
 マリアさんと私、マリアさんの首元でずっと黙ってたリースさんの、呆気にとられた声が重なった。
 「その時は自前の力で撃退したんだが、以降、暴行された経験を持つ女にどう接して良いのかが解らなくなってるんだ。下手な言動で恐怖を思い出させたり傷付けたりしないか、無神経な態度を見せてはいないかって、な?」
 返す言葉が見付からないのか、アーレストさんは唇を噛みながら師範の手を離して立ち尽くす。
 「さっきまで固まっていたのは、クロスツェルさんの事やアリアの真実だけではなく、マリアさんの過去を気にして……?」
 「……よく間違われますが、私は女性ではありません。私が男性に襲われかけた時の恐怖と、女性が男性に襲われた時の恐怖は、似て非なるものでしょう。「襲われかけた」と「襲われた」の違いも大きい。だから私には彼女達の気持ちが解らないし、どうするべきなのかも判らないんです。聖職に在る者としては、情けない限りですが……」
 意外だ。アーレストさんなら、どんな相手にも躊躇い無く手を差し出せると思ってた。
 「そうだな。迷いや戸惑いってのは、隠そうとしても周
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