Side Story
インナモラーティは筋書きをなぞるのか
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死んでいかないで。
アリアの、悲痛としか表現できないあの嘆きと願いは、残念ながら人間には届いてなかった。
「人間に対して呆れる事が、アリア信徒で居続ける理由になるの?」
「学も何も無い幼子が、そういう環境に置かれても尚みんなで一緒に生きたいと願い、実際にどうすれば良いのかを考え、自身に降り掛かる苦痛を承知で実行に移した。いつでも誰かがなんとかしてくれると無条件で信じ込んでいる其処らの他力本願共とは比べようもない覚悟と気高さだ。敬意を抱きこそすれ、愚かしいと切り捨てる要因には成り得ません。それに……」
神父服を脱いでも首に掛けたままだったペンダントを外套の上から押さえ、師範の唇が弧を描く。
「助け合いで廻る世界を目指すことが、誰か本位で身勝手な願いだとは思いません。志そのものは間違っていないと思うからこそ、静観を選んだ彼女の祈りを引き継ぎたいのですよ」
「……貴方は……アリア本人ではなく、アリアの願いを信仰しているのね?」
顔を上げた師範は、マリアさんの問いには答えず、白い歯を剥き出しにして ニッ! と笑った。
「ほれ行くぞ。さっさと動け、フィレス」
おっと。話が此方に戻った。
「すみません、師範。その前に一度、領主の館へ顔を出しておきたいのですが。休暇の無断延長と一時帰還を謝罪・報告しなければ」
「必要無い。お前は現在、「私」とアーレストの護衛騎士として教会に貸し出されてる状態だ。無断で休んでるどころか、特別手当が日毎に積まれてるぞ」
なんですって。
「それはもしや、前回此処でお世話になった時から?」
「ただでさえ失踪事件が続いてたんだ。お前まで消えたら、もっと大事になるだろうが」
…………あ、そうか。
不可解な出来事に遭遇した所為で一時的に離脱してはいたが、私は元々領土内の失踪事件を追ってたんだ。休暇を申請してあるとは言っても、怪奇現象が相手ではいつ解決できるか判らなかったし、担当騎士が長期間行方知らずとなれば、失踪事件を知る領民達に余計な不安を根付かせてしまう。でも私が師範達の護衛であれば、例えレゾネクトに殺されたとしても、「任務中に命を落とした」とそれらしい理由で誤魔化せる。
師範の嘘は私の為じゃない。領民達への配慮だ。
こんな深夜に外出するのも、何らかの気遣いか。
「……っ ありがとうございます……!」
常に冷静な視点で、大局を見ながら些事に気を配って行動する。
やはり、師範は素晴らしい。この方にお会いできて良かったと心から思える。
この方に追い付きたい、とも。
「待って」
気持ちが高揚するのを感じながら鞘付きナイフを腰帯に備えて上着を纏い、扉を開いた師範の後に続こうとして、マリアさんに呼び止められた。
「普通に行
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