Side Story
インナモラーティは筋書きをなぞるのか 1
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他ならぬ、私達人間の愚行だ。
「正直、呆れましたよ。何千年と歴史を重ねても、人間という生物の本質は変わらないものなのかとね」
確かに。
アリアが魔王レゾネクトと契約するに至った直接的な原因は、人間同士の争いによる親しい者達の理不尽な死だった。
悪魔による被害もそれはもちろんあっただろうし、そうした事実は確実に彼女の心を痛めつけただろう。
だがそれ以上に、悪魔達に脅かされている状況下で、同じ種族同士が命の奪い合いを続けていた現実が、幼い頃のアリアに強硬な手段を選ばせたと言って良い。
人間同士が互いに助け合う世界だったなら。
アリアが創造神を目指す理由は、ほとんどなかったのだ。
けれど結局、女神アリアの思想を天意と掲げて幾千の時を重ねてもまだ、人間は人間を相手に争い続けてる。
むしろ、天意を戦因にして被害を拡大させたようにも見える。
誰も殺さないで。
誰もそんな風に死んでいかないで。
アリアの、悲痛としか表現できないあの嘆きと願いは、残念ながら肝心な人間には届いてなかった。
「人間に対して呆れることが、アリア信徒であり続ける理由になるの?」
「学も何も持たない幼子が、そうした苛烈な環境に置かれてもなおみんなで一緒に生きたいと願い、実際にどうすれば良いかを考え、自身に降り掛かる苦痛を承知で実行に移した。いつでも誰かがなんとかしてくれると無条件で信じ込んでいる、そこらの他力本願共とは比べようもない覚悟と気高さだ。敬意を抱きこそすれ、愚か者と切り捨てる要因には成り得ません。それに」
神父服を脱いでも首に掛けたままだった信徒の証のペンダントを、外套の上から指先でそっと押さえ、師範の唇が弧を描く。
「助け合いで廻る世界……それを目指し、理想を掲げて立ち向かうことが、誰か本位で身勝手な願いだとは思いません。志そのものは間違っていないと思うからこそ、静観を選んだ彼女の祈りを引き継ぎたいのですよ」
「貴方は、アリア本人ではなく、『アリアの願い』を信仰しているのね?」
顔を上げた師範は、マリアさんの問いに答えず。
白い歯を剥き出しにして ニッ! と笑った。
「ほれ行くぞ。さっさと動け、フィレス」
おっと。話がこちらに戻った。
「申し訳ありません師範。出立する前に、実家である領主の館へ顔を出しておきたいのですが。休暇の無断延長と一時帰還を謝罪、報告しなければ」
「必要ない。お前は現在、『私』とアーレストの専属護衛騎士として教会に貸し出されてる状態だ。無断欠勤どころか特別手当が日毎に積まれてるぞ」
なんですって。
「それはもしや、前回ここでお世話になった時から?」
「ただでさえ原因不明の失踪事件が続いてたんだ。次期伯
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