Side Story
インナモラーティは筋書きをなぞるのか
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慮していただきたいけれど。
『フィレス……』
心做しか潤んだ瞳に見上げられ、にこりと微笑んだら
「はい、其処まで。」
大きな手に遮られた。
愕いて指先から落ちかけた小鳥を、手のひらでなんとか掬い上げる。
「此処から先は有料です。いっそ立ち入り禁止です。変態を司る偏執狂な女神サマは接近しないでクダサイ。」
持ち上げた目線の先で、にんまりと意地悪い笑みを浮かべる師範。普段の鋭いつり目が細くなってる所為で、悪ふざけ中の悪役にしか見えない。
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『……っお……っまえぇ……!』
「目の前の花をよく見ろよ。ソイツ、心身共に足掻いてもがいて諦めても立ち上がって、より高い場所を目指しながら必死で前へ進んでる、掛け値無しのカッコイイ女だろ? 生温い湯に浸けて腐らせるにはまだまだ早い。散り際まで美しく咲かせ続けてやるのが俺達の役目だと、そうは思わないか?」
手を外した師範が顎で雪山を示し、さっさと行くぞと再び歩き出す。
目が点になった私と、
『なっ、何がカッコイイ…… っふぎゃう!?』
「! すみません、つい」
私の両手で圧死寸前の危機に追い込まれた小鳥を置いて。
『び、びっくりした……。どうした、フィレス?』
「いえ、なんでもないです」
なんでもない。
そう、なんでもない。
あんな褒められ方は初めてだったから驚いただけだ。
驚きすぎて……心臓が破裂するかと思った。
何気無く触れた耳が、熱い。
『……………………有罪。』
「はい?」
『有罪有害有罪有害女誑しは断乎撲滅懐柔篭絡絶対阻止』
「はぁ…… ??」
鳴り止まない規則的な爆音を収めようと、右肩に乗り直したアオイデーさんの苛立たし気な呟きに耳を傾けた私は、だから気付けなかった。
言葉巧みに真意を隠し、私達に背を向けたまま勝ち誇った笑みを浮かべている、師範の一人言に。
「悠久の時を生きる女神とやらも、案外大したことはないな」
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