暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
インナモラーティは筋書きをなぞるのか
[14/14]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
慮していただきたいけれど。
 『フィレス……』
 心做しか潤んだ瞳に見上げられ、にこりと微笑んだら
 「はい、其処まで。」
 大きな手に遮られた。
 愕いて指先から落ちかけた小鳥を、手のひらでなんとか掬い上げる。
 「此処から先は有料です。いっそ立ち入り禁止です。変態を司る偏執狂な女神サマは接近しないでクダサイ。」
 持ち上げた目線の先で、にんまりと意地悪い笑みを浮かべる師範。普段の鋭いつり目が細くなってる所為で、悪ふざけ中の悪役にしか見えない。
<i7707|32367>
 『……っお……っまえぇ……!』
 「目の前の花をよく見ろよ。ソイツ、心身共に足掻いてもがいて諦めても立ち上がって、より高い場所を目指しながら必死で前へ進んでる、掛け値無しのカッコイイ女だろ? 生温い湯に浸けて腐らせるにはまだまだ早い。散り際まで美しく咲かせ続けてやるのが俺達の役目だと、そうは思わないか?」
 手を外した師範が顎で雪山を示し、さっさと行くぞと再び歩き出す。
 目が点になった私と、
 『なっ、何がカッコイイ…… っふぎゃう!?』
 「! すみません、つい」
 私の両手で圧死寸前の危機に追い込まれた小鳥を置いて。
 『び、びっくりした……。どうした、フィレス?』
 「いえ、なんでもないです」
 なんでもない。
 そう、なんでもない。
 あんな褒められ方は初めてだったから驚いただけだ。
 驚きすぎて……心臓が破裂するかと思った。
 何気無く触れた耳が、熱い。
 『……………………有罪。』
 「はい?」
 『有罪有害有罪有害女誑しは断乎撲滅懐柔篭絡絶対阻止』
 「はぁ…… ??」
 鳴り止まない規則的な爆音を収めようと、右肩に乗り直したアオイデーさんの苛立たし気な呟きに耳を傾けた私は、だから気付けなかった。
 言葉巧みに真意を隠し、私達に背を向けたまま勝ち誇った笑みを浮かべている、師範の一人言に。


 「悠久の時を生きる女神とやらも、案外大したことはないな」


[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ