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逆さの砂時計
Side Story
インナモラーティは筋書きをなぞるのか
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ろ、変態鳥!」
 『断る! 私のフィレスに邪な虫を近付けさせるものか! お前は特に許さん!』
 「なんでだよ!」
 『人間のお前と女神のフィレスが契りを交わしても、悲しむのは取り残されるフィレスだけじゃないか! 人間のままでいると決めたんなら、この子に余計な情を掛けるな! その分フィレスの後悔や絶望が深くなるんだと、莫迦なお前でも想像は可能だろう!?』
 「「!」」
 頭を低く、両の翼を広げて師範を威嚇するアオイデーさんの思い掛けない切り口に、私の指先がピクリと動いた。師範も、片方の眉を跳ね上げる。
 「……後悔も絶望も、するかどうかを決めるのはお前じゃない。フィレスだ」
 『絶望は、来ると解って待ち構えていても受け入れられないから「望みを絶たれた」と言うんだ。避けられるなら避けるべきだ。せめてフィレスだけは……』
 「貴女が誰の話をしているのかは知りませんが。もしも絶望を避ける手立てがあるとしたら、それは誰とも関わらず、何も望まず、無為に時間を遣り過ごすことだけでしょう。生きながら死んでいるのと何一つ変わらない。逆に言えば、私の後悔と絶望の深さは、私がどれだけ真剣に生きて来たかを自らに示す証です。何事からも目を逸らし、耳を塞ぎ、意欲の欠片も無く得た薄っぺらい証など、私は要りません。第一、私が人間世界を離れるのは無用な混乱を生じさせない為であって、逃げる為ではない。後々が楽だから早めに関わりを断てと言われても、余計なお世話ですとしかお答えできませんよ」
 『……っだが』
 私の顔を覗き込み、か細い声で ぴるる と鳴くアオイデーさん。
 生物の気配を消して何千年か、もっと長く世界を見守り続けて来たらしい女神は、たかだか二十年とちょっとしか生きてない私では決して量り切れない思いを抱えてる。口惜しい生き別れも遣り切れない死に別れも嫌になるほど経験し、見送ったに違いない。
 でも。
 誰かは誰かであり、私は私だ。
 「貴女が知る誰かは、立ち直れないくらいの絶望に堕ちてしまったんですね。不謹慎と思われるかも知れませんが……其処まで強く深く誰かや何かを愛せたその誰かを、心から尊敬します。自分を殺せるだけの熱情を、私は未だに知らないから」
 『……そんなもの、知っても辛いだけだ』
 「知らないものを知りたいと思ってしまうのは、生物の本能なんですよ。それに」
 落ち込んでしまったアオイデーさんの足元に左手の人差し指を宛がい、ちょんと乗り移った小鳥を右手で包み、胸元でそっと抱き締める。
 「いつか人間世界を離れて親しい人達を亡くしても、私には貴女が居てくれるのでしょう?」
 アオイデーさんの言葉を全面的に信用するなら、彼女は私の成長を見守ってくれた親も同然の女神だ。傍に居てくれるなら、それはそれで心強い。
 食事や寝床はともかく、他は遠
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