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逆さの砂時計
Side Story
インナモラーティは筋書きをなぞるのか 1
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のつもりなのか、大小二体で仲良く横並びしてる。

 確か執務室の机の上にも、これとそっくりな形の燭台が置いてあったな。
 あちらは、本体の半円下部から伸びて上向いた四本足が、ロウソク立てと受け皿になっていた。
 最初ちらっと視界の端に映り込んだ時は、愉快な物が売られてるんだな、程度にしか思わなかったが…………ふむ。

 なるほど。
 二人共、くらげが好きなのか。
 新発見だ。

「どちらへ行かれるのですか?」

 やや間を置いてから手ぶらで出て来た一般民姿の師範に、彼用と思われる黒い外套と、(なまくら)な剣を手渡す。

「安直な手段でアリア信仰の禁忌を犯したド阿呆の所だ。女神アリアが……いや、今はロザリアか? 彼女が人間と変わらない思考回路の持ち主なら、三人……は違うな。ロザリアはべゼドラを嫌ってる。同行はしてないだろ。おそらくべゼドラを除いた二人でそこへ向かう。話を聴くにはちょうどいい集合場所だ」

 あ。
 教会の外じゃなくて、街の外を出歩くのか。
 だったらバッグも必要かな。

 クローゼットの中にあるバッグは、どちらも同じ造りだが。
 師範の所有物ならこっちかな? と、傷が多いほうを追加で手渡し。
 何も言わずに受け取った様子から、間違えてないと見えてほっとする。
 しかし。

「アリア信仰の禁忌を犯したド阿呆?」

 ロザリアさんに暴行を加えたべゼドラさんやクロスツェルさんではなく、他に、アリア信徒を怒らせる何かをやらかした人物がいた?
 心当たりはないが、誰の話だろうかと小首を傾げた途端。

「貴方は、真相を知ってもまだ、あの子の信徒を続けるの?」

 ベッドの端で両足を下ろして座ってるマリアさんが、師範に声を掛けた。
 その隣で猫のように丸くなって寝ていたティーも顔を上げ。
 師範の動きを目だけで追いかける。

 受け取った抜き身の剣をそのままの状態で腰帯に挿し込み、バッグを肩に掛けてから外套を羽織った師範は、廊下へ続く扉の取っ手を掴んだところでマリアさんへと振り返り、頷いた。

「今のところ、辞める理由が見当たりませんので」

 師範の言葉遣いが丁寧だ。
 珍しい。

「あの子は、浅はかにも自らを創造神と偽り、自分本位な願いの為に世界を作り変えようとしたわ。それは決して赦されざることよ」
「はっきり言えば、やり方自体は誉められたものではありません。人間には無い力を所持していても結局人間と大差ない方法しか選べなかったのかと、少なくない落胆を覚えたのも事実です」

 しかし、魔王と契約した当時の彼女の状況、推定年齢、知識量、成長度や世界情勢を考慮した場合、私には彼女を責められない。
 彼女の選択を助長したのは、悪魔の(ささや)きなどではなく。

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