Side Story
インナモラーティは筋書きをなぞるのか
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用と思われる黒い外套と鈍な剣を手渡す。
「安直な手段でアリア信仰の禁忌を犯したド阿呆の所だ。女神アリアが……いや、今はロザリアか? 彼女が人間と変わらない思考回路の持ち主なら、三人……違うな。多分、ロザリアはべゼドラを嫌ってる。同行はしてないだろ。恐らく、べゼドラを除いた二人で其処へ向かう。話を聴くのに丁度良い」
あ。教会の外じゃなくて、街の外を出歩くのか。だったらバッグも必要かな。
どちらも同じ造りだけど、師範の所有物ならこっちか? と、傷が多いほうのバッグも追加で手渡し。違うとも何とも言わずに受け取った様子から、間違えてないと見えてほっとする。
しかし。
「禁忌を犯したド阿呆?」
ロザリアさんに暴行を加えたべゼドラさんやクロスツェルさんではなく、他にアリア信徒を怒らせる何かをやらかした人物がいた? 心当たりは無いが、誰の話だろうかと首を捻ると
「貴方は、真相を知ってもまだ、あの子の信徒を続けるの?」
ベッドの端で両足を下ろして座ってるマリアさんが師範に声を掛けた。その隣で猫の如く丸くなって寝てたティーも顔を上げ、師範の動きを目で追い掛ける。
受け取った剣を鞘には収めずそのままの状態で腰帯に挿し込み、バッグを肩に掛けて外套を羽織り、廊下へ続く扉の取っ手を掴んだ師範が
「今のところ、辞める理由が見当たりませんので」
マリアさんに振り返って頷く。
……師範の言葉遣いが丁寧だ。珍しい。
「あの子は自らを創造神と偽り、自分本位な願いの為に世界を作り変えようとしたわ。それは赦されざる事よ」
「はっきり言えば、遣り方自体は褒められたものではありません。人間には無い力を所持していても人間と大差無い方法しか選べなかったのかと、落胆を覚えたのも事実です。しかし、魔王レゾネクトと契約した当時の彼女の状況、推定年齢、知識量、成長度や世界情勢を考慮した場合、私には彼女を責められない。彼女の選択を助長したのは悪魔の囁きなどではなく、他ならぬ私達人間の愚行だ。正直、呆れましたよ。何千年と歴史を重ねても人間の本質は変わらない物なのかとね」
確かに。
アリアがレゾネクトと契約するに至った直接的な原因は、人間同士の争いに因る親しい者達の理不尽な死だった。悪魔による被害も勿論あっただろうし、そうした事実は確実に彼女の心を痛め付けただろう。だがそれ以上に、悪魔に脅かされてる状況下で同じ種族同士が命の奪い合いを続けてた現実が、アリアに強硬な手段を選ばせたと言って良い。
人間同士が助け合う世界だったら、アリアが創造神を目指す理由は殆ど無かったのだ。
だが、アリアの思想を天意と掲げてもまだ、人間は人間と争い続けてる。寧ろ、天意を戦因にして被害を拡大させたようにも見える。
誰も殺さないで。誰もそんな風に
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