Side Story
少女怪盗と仮面の神父 50
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言って、今更退く気は微塵も無いが。
「……良い目ね。強い意志を感じる、生きた目だわ。貴女を選んで正解だった」
「え?」
此方をじっと観察していたプリシラが自身の分の紅茶を一口飲み、ふう……と息を吐いて
「アーレストとは何処まで進んだの?」
「…………は?」
唐突に話の腰を折った。
「だぁーからぁ。アーレストよ、アーレスト! 話は細部まできっちり届いてるんですからね! 抱き合って口付けを交わしてたんでしょう? まさか、まだ一線は越えてないとかトロい事は言わないでしょうね!?」
「は……っ、はいぃーっ!?」
(突然何を言い出すの、この女性! 誰が、誰と、何だって!?)
「全身をぐっしょり濡らして、それはそれは情熱的に身を寄せ合ってたそうじゃない。隠したって無駄よ!」
「それは多分、崖下の河に落とされた時の救助活動です! 口付けされた覚えはありませんが、あるとすれば人工呼吸だと思われます! 誰に聴いたかは教えてくれそうもない予感がするのでこの際置いときますが、大いなる誤解で勝手な妄想を過剰に膨らませないでいただけますかね!? 神父様とそんな関係になる予定は未来永劫有りませんから!!」
此処でもか。聖職の本山に来てまでも恋愛話なのか。
(もー確信した! 恋愛脳は女性みんなで一蓮托生なんだ! 間違い無い!)
自分とそっくりな顔が目と鼻の先で嬉々として恋愛を語るとか、勘弁してほしい。この遣り取りだけで一気に三十年分くらい老けた気がする。
「そうなの?」
「そうなんです!!」
精神的にぐったりな自分を見て、首を傾けるプリシラ。
「そう……やっぱり、駄目なのね」
「?」
独身女性に知り合い男性との縁結びを推奨するお節介なオバサマそのものの勢いで身を乗り出していた彼女は、またしても急にご令嬢の空気を纏って居住まいを正し、苦笑いを浮かべた。
「あの子、極度の 人間恐怖症 だから。幼馴染とそっくりな顔で性格が真逆な貴女になら心を開いてくれるかも知れないって、期待してたのよ」
「……………………………………………………?」
おかしい。なんか、言葉の途中で変な雑音が混じったような……
「あーあ。今年も、年齢そのまま恋人不在歴更新……か。残念だわ。アーレストってば本当、おちょくり甲斐が無い子。いつになったら人間に馴れてくれるのかしら」
「雑音じゃなかった! 神父様が人間恐怖症!? アレで!? ドコが!?」
『ふてぶてしい大臣』と称えるべき態度の数々を思い出し、ありえない音の並びを全力で否定する。
が、プリシラは目線を落とし、悲しげに眉を寄せた。
「あの子、人前ではいつでも笑っていたでしょう? 女性の前では特に」
「……はい。一部例外はありましたけど、大体
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