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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 50
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的に受けていた。ご両親を病気で一度に亡くした後は単身でハーゲンを離れ、数ヶ月後アルスエルナ王国内ネアウィック村にて有力者の庇護下に入る。越境前から保持していた複数国の文字を書き分け・言語を聴き分ける能力は、幼少期の特殊な環境下で培ったもの。アリア信仰の教本には複雑な形の古代文字も含まれているのに、一見しただけで難無く書き写せるなんて。お父様は相当優秀な書記官だったのね。獣に追われて体得した足の速さは、アルスエルナ国内随一。手先の器用さは、修練を積ませればどんな分野でも一流の職人を目指せる可能性有り。趣味は崖観察と飛び込み。特技は裁縫と金物工作。将来の夢は、アルスエルナ史に名を残す燭台専門の装飾技師。料理の腕は良いが自覚は無し。非常に愛情深く義理堅い性格をしている一方で思い込みも激しく、斜め方向に勘違いすることも多々ある。男性不信の気が少し混じっているのは、貴女の前でお母様を侮辱し続けた人達の所為ね。恩人と定めた人間以外に噛み付く癖も、ご両親への愛情が色濃く影響しているから。大切にされたから大切にしたい……なんて、お二人が如何に貴女を愛していたのかが目に見えるような純粋さだわ」
 「なっ、ぁ!!?」
 驚きで思わず立ち上がる自分を見上げて、藍色の目が緩くアーチを描いた。
 「ど、どうして私の夢……、両親の、名前っ」
 村での惨劇時、心臓を止めて倒れた際にバッグから飛び出した義賊用の道具類は騎士達に気付かれていたが、燭台の構成図を描き連ねた簡易本は誰も見分しなかったと聞いたし、結局誰にも話さなかったから、自分が本気で装飾技師になりたがっていた事は、自分以外の何者も知り得ない筈だ。
 それに、両親は互いを「ミリー」「ノイ」と愛称で呼び合っていた。二人の本名など、実子の自分ですらはっきりとは覚えてなかったのに。
 「友達が教えてくれたのよ」
 「友達?」
 長年隣国で暮らしていた両親を知り、次期大司教とも繋がりを持ち、他人の心まで読めてしまう人間がいるのか? と首を捻りかけ
 「お座りなさい。此処は誰が・どうしてを解く場所ではない。貴女の覚悟を問う席よ」
 再度プリシラの手に着席を促され、戸惑いながらも黙って従う。向かい合った年齢違いの同じ顔が満足そうに頷いた。
 「貴女は私の補佐兼後継者として中央教会にやって来た。故に私は、後継者である貴女を犬猫のように可愛がったりはしない。苦しい時、辛い時、寂しい時も、私は貴女を庇わないし、助けない。総て自分で考え、自分の力で対処しなさい」
 一切の甘えを許さないと切り捨てるプリシラに、一瞬息が止まる。
 罰の意識を除いても、重責を担う者になる以上そういった覚悟はあって然るべきだと解ってはいたが……改めて突き付けられると少々胸が痛む。
 「……はい」
 動揺が滲む返事だ。不様にも震えてる。
 かと
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