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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 50
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物内でいきなりの個人行動通達。
 嫌がらせか。
 王城では緊張してて殆ど眠れなかったし、出された食事なんか目でも舌でも味わってる余裕は無かったし、王家一同のご尊顔など直視できないし覚えられないし。ちょっとでも隙を見せていたら……と思うと、予め最低限の作法だけでも教え込んでくれていたヴェルディッヒには頭が上がらない。
 あ、でも。第二・第三王子の容姿は王様譲りっぽかった。王妃陛下と王太子殿下は、纏う空気からして異次元のソレだった気がする。なんかこう、体の周りで見えない花とか星とかが発光しながら飛び交ってる感じ。アーレストとはまた別の煌びやかさだった。
 と。正直な感想をヴェルディッヒに告げてみたら、地味存在で悪かったな! と拗ねられた。気にしてたのか。
 「そんなに萎縮しなくても、内部の造りは至って単調だぞ? 迷うとしたら、右へ行くか左へ行くか、手前から何番目の扉に用があるか、だけだ」
 「だって、外から見たら窓だらけじゃないですか! 何百部屋あるんです、此処!?」
 「教会正面に見える窓の数と部屋の数は一致しませんよ。今は、建物を三つに割って正面左が主に信徒達の生活・仕事区域、真ん中が一般向けの礼拝・見学区域、右側が役員達の生活・仕事区域、とだけ覚えていただければ十分です。貴女が招かれている次期大司教様の執務室は、中央に在る左右対称の階段を右へ上って右手側の廊下を真っ直ぐ進んだ先、突き当たり正面に在ります」
 (……本当かなぁ……?)
 「嘘を教えてどうする」
 「声に出してないのに!」
 「顔には出てたな」
 「純粋無垢な自分が恨めしいっ」
 「冗談を言える余裕があるなら問題無し。待っててやるから、とっとと行って来い!」
 「……はい。」
 肩を小突かれ、指定された場所へ渋々向かう。
 が。
 (案の定迷ったら一生文句を言い続けてやるーっ!)

 「……彼女も、閣下の『生贄』でしょうか。セーウル殿下」
 「……私に尋かれても困る。」

 一度擦り抜けた礼拝待ちの異様に静かで分厚い群列を再度擦り抜け、人の熱と臭いでへとへとになりながら中央階段を右へ上がる。
 言われた通りの順路は確かに単調で、突き当たりまでひたすら真っ直ぐに歩けば良いのだと一目で分かった。迷うことはなさそうだが……
 (む、無駄に広い……。いや、ちゃんと意味があっての広さなのかも知れないけど! それにしたって、突き当たりに着くまで何分掛かるのよ、この廊下!)
 さりげなく敷かれてる落ち着いた色調の絨毯とか、天井に点々とぶら下がってる豪華なシャンデリアとか、右側にずらーっと整列する扉の脇にそれぞれ飾られてる壺とか花瓶とか風景画とか、左側に等間隔で填められてる大きなガラス窓とか。
 此処に使われてる物だけで総額幾らになるんだろう? 一つでも壊し
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