Side Story
少女怪盗と仮面の神父 50
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(そりゃあまあ、お黙り! なんて勅令や上命を喰らってたら、どこに誰が潜んでるか分かんない危うい状況下で、助けて騎士様! とは口が裂けても言えないよねぇ。その時は助けられたとしても、後々情報漏洩と勅令違反と命令無視の罪で処刑されちゃうもん。それに多分、私を心配してくれてた。だからこそ、アルフィンと私の確保を一層急いでたんだ)
ハウィスが負傷し、ミートリッテの心臓が止まってしまったあの一幕は、村の人達にも少なくない衝撃を与えただろう。
役職上、騎士と剣は切り離せない関係だ。
万が一、ミートリッテと任務遂行中の騎士が出会して、また怪我人が出る瞬間を見てしまったら……そう考えてもおかしくはない。
(怖かったよね、みんな。目の前で人間が同時に二人も死にかけるなんて。しかも私は、どうして、どの程度の怪我を見たら心臓を止めてしまうのか、ハッキリしてなかった。いつ何がきっかけで倒れるか分からない人間なんか面倒くさいし、精神的な負担を思えば私とはあまり関わりたくなかった筈。それでも、私を避けたりはしなかった。みんな、優しくしてくれてたんだ。私が感じてたよりも、ずっと)
「暴論……そうなのよね。エルーラン殿下のやり方は真相を知れば知るほど暴力的に大雑把なのよ。なのに、導き出される結論はいつだって最善なの。今回の件だってそう。アルスエルナを快く思わないバーデル軍と暗殺組織を相手にしながら、いきなり始まらせて、あっという間に片付けてしまった。アルスエルナ全土を巻き込む大騒動になってもおかしくなかったのに、ね」
あらかじめ結末を知ってたんじゃないかと疑いたくなる伏線の張り方は、人間業とは思えない豪快さと精密さで。
怒りに身を任せたハウィスが全滅させようとしていた暗殺者集団でさえ、全員は殺さなかった。殺させなかった。
すべては母子を護る為。
延いては、アルスエルナ王国の防衛力を維持する為に。
「私が知る限り、殿下が判断を間違えた例はない。彼はいつも正しかった」
でもね。
七年以上殿下の庇護下に置かれていても、一つだけ腑に落ちないの。
力無い者達はどうすれば良いのか。
その疑問に、私は今でも答えを出せないでいる。
それだけはどうしても、殿下に教わった方法が正しいとは思えなくて。
ずっとずっと考えていて。
だけど、全然分からない。
「だからって、貴女にすべてを託すのは卑怯、なのでしょうけど」
力ある者達にも、すべてを救えるほどの力は無く。
けれど、彼らと彼らに護られた者達は、社会の恩恵を受けられない者達が生きようと必死で足掻くほど、秩序を乱すなと、容赦なく責め立てる。
差別的で冷たく、閉鎖的で残酷で、どこまでも理不尽に穢された世界。
そ
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