Side Story
少女怪盗と仮面の神父 50
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愁傷様。って呟きが物凄く不穏なのだが。
ソッチ方面て何? いったい、誰の話をしてるのか。
脳内に疑問符を乱舞させてる自分の耳に手を添え、
「貴女はセーウル殿下の御学友みたいな立ち位置だから。王都に着くまでの間だけでも、いつも通りに接して差し上げて?」
ハウィスがこっそり囁く。
本来は不敬とされる行いを、保護者役の三人に推奨されてしまった。
そりゃあ、三人とセーウル王子は昔からの知り合いと身内で、今回の件でも協力者の立場だったから、そういう気兼ねは殆ど要らないのかも知れないが……此方は正真正銘の底辺上がりで、付き合いと言っても自警団員と一村人の枠を出ず、王子とアリア信徒では何処までが許容範囲内なのかイマイチ掴めてないのに。こういうのって、初めの内だからこそしっかり弁えさせるべきじゃないのか。
(なんだかなぁ……)
「分かった。一般民の前以外では、いつも通りね」
「そうしてくれ」
釈然としないものを感じつつも了承の意を示せば、エルーラン王子に頭をポンポンされながら満足気に頷くセーウル王子。
(あんたは何処のお子様だ! 騎士達の冷めた目線に気付きなさいよね、まったく)
「んじゃ、出発だ。二人共さっさと乗れ!」
「痛……ってっ! ……ほら」
兄に背中を強く叩かれてよろめいた弟が、それでも自然な動きで体勢を立て直し、手を差し出してくる。
こうやって並ぶ所を改めて見ると、兄弟の容姿は華が無い辺りがそっくりだ。ずっと身近に居たから「本当は王子です」なんて言われてもピンと来なかったが、兄とよく似た隙が無い所作は、なるほど、王族だなと思わせられる。
「……よろしくね、ヴェルディッヒ」
「ああ」
ハウィスから離れ、彼の手が導くまま馬車へ乗り込み、席に着く。
「あ、そうだ。神父様」
「はい?」
「短期間ながら、大変お世話になりました。お礼と言っては何ですが、その顔に拳の跡を付けさせてくれませんか? 一つだけで構わないので」
「神父として当然の事を為したまでです。なので、丁重にお断りさせていただきますね」
「とても残念です。神父様に頂いた心理的負荷のおかげで不倶戴天な気持ちです。今は人目もある為潔く退きますが、いずれ必ずお返しに伺います。覚悟しておいてください」
「はい。道中、お気を付けて。お二人に女神アリアの祝福が舞い降りますように」
「「ありがとうございます」」
全く動じてないいつもの笑顔で別れを告げたアーレストが、外側から扉を閉める寸前
「行ってらっしゃい!」
聞き慣れた母の明るい声に振り向き
「行ってきます!」
此方も、とびっきり明るい声を弾ませた。
閉ざされた空間の外側で先導者の合図が響き渡り、やや間を置いてから、車輪がゆっくりと滑り
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