Side Story
少女怪盗と仮面の神父 50
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
領から離れた隙にと、中央広場で対武装勢力を想定した実地訓練をしている中、夢中で剣を振るっていた私を含む全員が、上空を旋回し続ける鳥に気付けなかった。
「真っ先に気付いた彼が、貴女の帰村を止めようと動いたみたいだけど」
「……私が、振り切った」
村の入口まで戻った時、やけに賑やかな気配がするなあとは思ったのだ。
それがまた、男女入り混じった歓声に聴こえたものだから。
芸人を招くような楽しい何かをしているのかと。
なのに、出迎えてくれた『彼』は、慌てた様子で自分を引き止めていて。
早くハウィス達に会いたかった自分は、『彼』の制止を振り切って騒ぎの中心へと向かい……
「……貴女のせいじゃないし、彼の不手際でもないわ。私が油断したのよ。真剣を握ってる時は相手から目を逸らしてはいけないと、解っていたのに。突然聞こえてきた貴女の名前に、気を取られて……そうして、今度は貴女を死なせてしまうところだった」
ハウィスの右手が、自身の左脇をそっと撫でる。
奇しくもマーシャルが負傷した箇所と同じそこには、ミートリッテを呼ぶ『彼』の声に反応し、振り向きかけた時に刻まれた傷の跡が残ってる筈だ。
「おにいさん……ベルヘンス卿が助けてくれたあの後からの私の記憶が一部曖昧なのは、風邪をひいて寝込んでたから、じゃなくて、本当は桃の暗示で眠らされてたせい、なんだね?」
「正しく言えば、それもある、ね。貴女に蘇生処置を施したベルヘンス卿がエルーラン殿下へ鳥を飛ばした後、貴女は実際に三日間くらい、熱を出して寝込んでいたから。桃の果汁が私の手元に届いたのは熱が治まる頃だった。それで、怪我に関する記憶は忘れさせようと、私達三人で決めたのよ」
「『彼』とベルヘンス卿とハウィス、で、三人?」
「そう」
「……そっか……」
浅く頷くハウィスに、ミートリッテの拳がきゅっと固くなる。
鮮血を散らしながら地面に転がっていくハウィスと、剣を滑らせた勢いで倒れ伏す騎士候補生らしき男性と、周りで見物していた村の人達の悲鳴と。
いくら記憶を封じる暗示が掛けられていたと言っても、大切な人のあんな惨劇を綺麗さっぱり忘れていた自分が信じられない。
「……あれ? でも、あの状況だと村のみんなは騎士団の存在もハウィスの仕事も知ってたんでしょ? 七年間ずっと私の耳にそれらしい会話が一つも入ってこなかったのは、エルーラン王子が口止めしてたから?」
「いいえ。あの日の出来事は、あの場に居合わせたみんなの総意で自主的に口を閉ざしてもらってるし、元義賊やネアウィック村周辺の秘密に緘口令を出していたのは、エルーラン殿下ではなく国王陛下と王太子殿下よ」
「こ、国王陛下と王太子殿下ぁ?? なんでそんなに
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ