Side Story
少女怪盗と仮面の神父 50
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(や)る。」
寒気でもするのか真っ青な顔で両肩を抱き、豪華な衣装で飾り付けた体を大袈裟に竦ませるセーウル王子。怯えを含んだ新緑色の目が捉えているのは、彼の護衛である騎士達だ。
王子が護衛に怯えるとか、意味が解らない。
「それに、お前はもう、アリア信仰上層の正式な関係者だ。王族と同じ馬車に乗ると決まった時点で、よっぽどじゃない限り不敬罪は適用させられない。もっと堂々としてないと中央教会の信徒達に舐められるぞ」
「うーん……」
『堂々』と『図々しい』と『馴れ馴れしい』の違いについて考察してみたくなったが、これ以上の立ち話も彼に対する無礼行為か。しょうがない。
「承りましたわ、セーウル様」
「譲歩のつもりか!? 気持ち悪いから即刻止めろッ!!」
「曲がりなりにも女に対して、気持ち悪いは失礼なのでは。十年越しの秘密裡な帰還とは言え、王族が礼儀に反する態度を見せては民への示しがつかないと思います。お父様に叱られますよ」
「も、本っ当にヤメテ。お前が姪とか、嘘でも考えたくない」
開け放たれている馬車の扉に肩を預けてぐったりするセーウル王子。此方を見ていたハウィスが何とも言えない感じで苦笑いを浮かべ、騎士達が一様に肩を揺らして……笑ってる? 笑う場面なの、今?
「その辺にしとけ、セーウル」
「ミートリッテさんもです」
「兄上。アーレスト様」
左の一団に指示を飛ばしていたエルーラン王子と、その傍らで様子を窺っていた見送り役のアーレストが、二人並んで近寄って来た。周辺に居る、セーウル王子以外の全員が慌てて礼を執る。
「確かに、王家の方々以外の者が殿下方を呼び捨てにするなど、体面上は決して許されません。ですが、型に填まった対応しかできない人間は周囲に舐められる……というのも事実ですよ。言われた通りの事しかできません、自分からは絶対に動きませんと、己の限界を自らで証明しているのですから、当然の評価ですよね。有力者は時として下位者の器を上位者の器同然と見定めるもの。貴女に「つまらない」と札が付けば、縁を結んだ殿下方にも同じ札が貼られるのです。その点をよく考えて」
「特にお前がこれから行く場所で待ってるヤツは、容赦無く人を選る。遜る相手は遠慮無く踏み潰すし、隙を見せれば大喜びで取って喰う悪魔だ。ま、何事も適度に適切に、柔軟に生きろ」
中央教会に悪魔? なんで? と内心で首を捻ると
「また、彼女をそのように……。噂ほど酷い御仁ではないと思うのですが」
セーウル王子も不思議そうに声を返した。
(『彼女』?)
「お前はあいつにとって護るべき対象だから被害に遭わなかったんだよ。弄る対象に選ばれなくて良かったな、マジで。」
ミートリッテは十中八九ソッチ方面だ、ご
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