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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 50
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ない、痛みを感じるほど真っ直ぐな視線。
 その目の奥をじぃっと窺い……ふ、と笑う。

 「無理です。」

 「……そう」
 「はい。生きてる限り、人間は必ず後悔します。その時々で最善の選択をしたつもりでいても、別の可能性を見付けた瞬間に「もしかしたら」と思っちゃうんです。想像力が決意を邪魔しちゃうんです。でも、想像力が無ければ人間は生きていけません。だから、後悔はします。今は良くても、いつか、きっと」
 「……後悔したら、逃げる?」
 「いいえ。既に起きた事から逃げても過去は変えられない。膝を抱えて周りに八つ当たりして泣き喚いて駄々を捏ねてたって何も得られないし、みっともないだけ。なので、後悔した時はそれから先どう生きるかを考え直します。そして、死ぬまで後悔を繰り返します」
 「終わりが無い後悔を続けるの? 一生?」
 「はい」
 「そう……」
 「! プリシラ様?」
 固く閉じた蕾も綻ぶ温かい笑みを浮かべ、ふっくらした唇が戸惑う自分の額に触れた。
 「ようこそ、アルスエルナ中央教会へ。貴女を歓迎するわ、ミートリッテ=ブラン=リアメルティ第一補佐。先程も言った通り、私は貴女を助けない。でも、話し相手にはなってあげる。貴族教育や人材発掘で追い詰められた時は、私を相手に愚痴を溢せば良いわ」
 名前の呼び方と笑顔の質が変わった。
 本当の意味で迎え入れられたのだと悟り、嬉しいような恥ずかしいような照れ臭いような、そわそわした気分に襲われる。
 でも。
 「謹んで遠慮させていただきます」
 「あら、どうして?」
 「その……弱味にされそうで、すっごく怖いから」
 「まぁ! 聡い子は好きよ」
 (否定しないし!)
 「逃げ惑う獲物を上から眺めるのって、とても楽しいわよね」
 (獲物認定されてるし!!)
 誰だ。こんな危ない女性に実権を握らせた奴は。
 怒りたいから是非とも出て来てもらいたい。
 「ふふ。冗談はさておき……」
 (本気しか無かったよね、今)
 「貴女には本当に期待しているの。私も司教になって日が浅いし、急がせるつもりは無いけれど。貴女が私の隣に立って支えてくれる日を、此処で心待ちにしているわ」
 「っ……」
 白く細長い指先が自分の前髪をふわふわ撫でる。優しくて温かくて……まるでハウィスに撫でられているみたいだ。心地好さで頬に熱が集まる。
 「……プリシラ様、私」
 「二代続けて同じ顔の大司教って、絶対波乱を呼ぶと思うの。主に上層部で。こんな面白い話、見逃す手は無いわよね!」
 「帰って良いですか」
 「ダメ」
 「ですよね」
 (ごめん、ハウィス。愉快犯と貴女を重ねた事に対して、罪悪感が半端無いよ)
 目の前で微笑む人物に振り回されてる碌でもない未来が容易に想像できて、辛(つら
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