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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 50
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 「しつこ……? そういう相手がいたんですか?」
 「今は遠くへ行ってるけどね。アーレストの前で音を大きく高くする人間が多い中、たった一人、小さく低くなる希少種だと言っていたわ。だからか、傍に居ると落ち着くんですって。美姫の名を欲しいままにするこの私を恐がっておいて、男性にはがっちりべったり絡み付くのよ? 憎たらしいったらありゃしないっ! 確かに、男性にしておくには勿体無いくらい綺麗な子ではあるけど!」
 (がっちりべったり? 男性に?)
 「……衆道?」
 「それ、本人達には絶対言わないほうが良いわよ。修行徒時代、二人共本気で被害者になりかけてね。以来、アーレストはともかく、もう一人のほうがその手の話に並々ならぬ嫌悪感を抱いているの。私が一般民の前で肌を曝す際どい女装をさせた所為だけど」
 「さらっと酷い告白!」
 「業腹な似合いっぷりだったわ」
 「教会で何をやってるんですか、貴女!?」
 「友達とは遊びたいじゃない」
 「遊びの定義をもう少し優しく、普通のものにしてあげましょうよ!」
 「「普通」の定義は「つまらない」よ。せっかくの人生、楽しまなくちゃ。主に私が。」
 悪魔だ。
 エルーラン王子の言葉は真実だった。女悪魔が教会に巣食ってる。
 もしやアーレストが度々自分の顔を見ては逸らしたり微妙な表情になっていたのは、プリシラのこういう悪魔的所業の所為か。自分とプリシラの顔を重ね、別人だと判っていても直視できないほどに恐がっていた、と。
 惨い。
 (何処の誰だか知らないけど、女装させられた人……ご愁傷様です……って、そういえばお父様も「ミートリッテは十中八九ソッチ方面だ、ご愁傷様」とか物騒な台詞を呟いてなかったっけ……?)
 いやぁーな予感に顎を持ち上げられて、プリシラの目をそろりと窺った瞬間。
 「っ……」
 自分と同じ顔なのに、思わず息を呑んでしまう妖艶さで微笑まれた。
 どうしよう。
 怖い。
 「……一応、数日間の付き合いしかない貴女にも親しい人向けの仮面を見せてくれたみたいだし、多少の進歩はあったってことで、アーレストの件は以後経過観察ね」
 ふわふわ泳ぐ裾を蹴りながらソファに戻ったプリシラが、優雅な仕草で紅茶を一口。手で持った受け皿の上に茶器を置く。
 「貴女にはこれから私の実家で最低でも五年を掛けて令嬢の振舞いと貴族の職務を徹底的に覚えてもらいます。補佐の仕事に関してはその後、様子を見ながら徐々に習得させていくつもりよ」
 「ごっ……五年!? 令嬢の振舞いはともかく、どうして貴族の仕事……」
 「アーレストに説明されなかった? アリア信仰の大司教はそれぞれの国で国主級の相談相手や家庭教師を務めたり、アリアシエル開催の定例会議で各国の代表者達と顔を合わせる為、その後継者の選定条件には「
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