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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 50
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に語っていたとも聴いた。お父様が彼らに何をしたのかは、恐ろしくて問い質す気になれない。
 「うん、ありがと。待たせてごめんね。ドレス、重かったでしょ?」
 「こればっかりは慣れるしかないもの。貴女も動き難そうよ? 足元は大丈夫だった?」
 「これこそ毎日着なきゃいけない物だし、どうしようもないもん。まさか、膝上で切り揃えるワケにもいかないしねぇ」
 斯く言う自分も、アーレストが普段着用してる物と同じ真っ白でダラダラした長衣姿だ。胸元にはアリア信徒の証である月桂樹の葉を銜えた水鳥のペンダントも掛けている。
 実際に着るのは二度目だが、白いだけあって些細な汚れでも異常に目立つし、丈が長い分結構重い。コルダ大司教もタグラハン大司教も、見た目は中年を超えてちょっと経ってる? くらいの年齢だったのに、長衣だのマントだの金物装飾だの、よくも平然と着ていられたなあと素直に感心する。さらっとした肌触りと通気性の良さだけは、繊維職人さんと服職人さんの腕に感謝したい。
 「……では、参りましょうか。お手をどうぞ? アリア信仰のリアメルティ伯爵令嬢ミートリッテ」
 くすくす笑うハウィスが、手のひらを上にして自分に差し出す。
 ああ……この瞬間が人生の分かれ道か。
 「はい。参りましょう、ハウィス=アジュール=リアメルティ伯爵」
 同じ名前を持って別の道を行く母の手に自らの手を重ね、二人で一緒に門の外へと歩き出す。
 村に残った小さな自分が、遠ざかる母子の背中に笑顔で手を振ってくれた……気がする。



 「もう良いのか?」
 門を離れ道なりに数分進んだ地点で、王族付き第一・第二・第三騎士団員の混成隊が、白塗りの豪華な馬車を一台ずつ取り囲む形で左右二隊に分かれて整列していた。右側の騎馬隊が先発する王都組、左側の騎馬隊が後発するリアメルティ領の中心街組だ。
 手を重ねたままの母子は先発隊に歩み寄り、馬車の横で待ち構えていた王子に恭しく頭を下げる。
 「はい。道中お世話になります、殿下」
 「殿下は止めてくれ。お前にそう呼ばれると背中がムズ痒い」
 「……正体を知った上で貴方付きの騎士に囲まれている現状……貴方を呼び捨てにした場合、罰を受けるのは私なのですが。不敬罪で死ねと仰いますか。顔馴染み相手に随分と残酷な要求をなさいますね。セーウル殿下」
 顔を上げてわざとらしく首を傾げてみせれば、周りの騎士の何人かが一斉にセーウル王子へ視線を投げた。ちょっぴり非難めいているのは、長年の村暮らしで一般民感覚が染み付いてしまったらしい彼に、王子たる自覚を促す為か。
 「だっ、誰もお前に死ねとは言わねぇよ! てか、んなコト言ったら俺がこいつらに殺されるわ!」
 「? 騎士に殿下を殺せる訳がないでしょう」
 「いいや、やる。こいつらなら絶対、躊躇い無く殺
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