第11話 丘に聳り立つ
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衛宮士郎が夢を見る場合、契約したサーヴァントの生前の記憶を除けば主に二種類。
一つは、一部分に黒いモザイクか欠落した真の生まれ故郷の世界で生きてきた時の記憶。
そしてもう一つが――――。
「――――夢で此処に来るのも随分久しぶりだな」
今自分のがどの様な状況で剣の丘に来たのかをすぐに把握できる士郎。
当然だ。
この世界は士郎の心象風景であり、唯一の魔術だからだ。
だが何故このタイミングで此処に来たのかは不明だった。
「だが丁度いい。折角だし礼を言わないとな」
決心した士郎は剣の丘と地平を征く。
歩くも歩くも足を進める大地は赤銅の丘に突き刺さる贋作の剣だけ。
空を見上げても矢張り何時も黄昏時であり、巨大で無骨な歯車が音を鳴らしながら回るのみ。
その光景が延々と続いて行くだけかと思いきや、少し先の丘に剣槍矢斧弓などの贋作の矛とは全く違う異質な存在があった。
それに臆する事も無く歩み進めて行くと、途中で士郎の存在に気が付いたようで状態を回転させて幾つもの〇〇の〇を見開いてきた。
そうして士郎がすぐ近くまで行くと、
「こうして向かい合うのは久しぶりだな」
『向かい合うだけならばな。意識がある時でも意思疎通を図る事は可能なのだから、無理して向かい合う必要も無いだろう』
「それはそうだろうけど、やっぱり会話すると言うのは向かい合う事が大切だと思うぞ?」
『それは人同士の営みと在り方であろう。だが、まるで人間論の様に聞こえるが、少しは人らしく成れたのか?』
「それは・・・・・・どう、何だろうな・・・」
突き付けられて言葉に詰まる士郎。
その自覚が持てる自信があるかと言われれば、曖昧な返事になる。
――――全てを救う正義の味方になる。
その夢は当時と同じく間違ってはいなかった筈だが、その果てに終焉を向かい駆けて助けられた身としては、もうそれを目指す訳にはいかないと自戒している。
だがせめて、手の届く者達だけでも救いたいと言う欲があるが――――自分を顧みずに誰かを救わずに見捨てることが出来るかと問われれば、何も言えなくなるのが士郎の本音である。
その苦悩は今も正しく続いているのが読まれたのか、士郎の目の前の存在は淡々と言霊を紡ぐ。
『考えると言う事は大切だと思う。思考を放棄するよりは遥かにな。そう言う意味では人間らしさを取り戻しているのではないか?』
「そう・・・かな。そうだと良いんだが――――それにしてもお前の方こそ変わったんじゃないか?」
『む?』
「初めて話した時は喋り方が何処か事務的だったのに、今は流調で人間みたいだ」
『それは皮肉か?』
「まさか。褒めてるに決まってるだろ?」
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