巻ノ百十七 茶々の失政その三
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「だからじゃ」
「このことはですな」
「お止めせねばなりませぬな」
「何としても」
「豊臣家の為に」
「幕府は当家にはかなり大目に見てくれておるが」
やはり気を使っているのだ、このことは片桐もわかっている。
しかしだ、その幕府ひいては家康でもというのだ。
「これだけは別じゃ」
「民を奴婢として使いますし」
「本朝を乗っ取ろうとも考えているとか」
「そうした者達なので」
「認められる筈がありませぬな」
「そうじゃ、幕府も禁じたのはな」
幕府が開かれてから暫くの時を経てだ。
「やはりじゃ」
「あの者達が危ういと見極めた」
「だからですな」
「認めぬとした」
「これは天下の絶対の法じゃな」
「民を売り飛ばし奴婢として使いしかも国ごと乗っ取るなぞ言語道断じゃ」
まさにとだ、片桐は言った。
「だから当家もじゃが」
「しかし茶々様は」
「どうしてもです」
「わかっておられませぬな」
「切支丹のことも」
「これは危うい」
片桐はまたこう言った。
「若し豊臣家が切支丹を認めると」
「幕府もですな」
「流石に認められず」
「何としても止めようとして」
「戦ですな」
「それになりますな」
「そうなる」
そのことが危惧されるというのだ。
「だからな」
「何としましても」
「茶々様をお止めしなければ」
「今回ばかりは」
「何としても」
「そうじゃ、わしもな」
片桐も必死だ、その顔で彼の家臣達に言う。
「もう一度じゃ」
「茶々様にお会いして」
「そしてですな」
「何としても考えを変えて頂く」
「そうしてもらいますか」
「豊臣家の為にな」
是非にとだ、こう言ってだった。
彼は次の日早速だった、茶々の前にだった。
出てだ、実際に言った。
「お話があります」
「何じゃ」
「はい、切支丹のことですが」
すぐにこの話を切り出した。
「思い止まって頂けませぬか」
「認めることをか」
「はい、是非」
「何故じゃ」
茶々はその整っているがそれだけでしかない、しかしかなり強い光を放つその目で片桐を見据えて問うた。
「それは」
「はい、やはりです」
言う理由は考えていた、実際とは違うそれを。
「太閤様の政ですから」
「それを変えることなくか」
「いくべきかと」
「それはよい」
茶々は片桐の言葉に怒った目で返した。
「昨日わらわが言ったな」
「幕府に従わぬ」
「それにあの者達はな」
会った伴天連の者達もというのだ。
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