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千雨の幻想
6時間目
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 少しの破損なら問題ないというふうに彼女は振る舞う。

(こうなれば無理にでも近づいて拘束、いやその前に見失うか、二度も私の目を欺いたのだから三度目もありうる、……ただでさえ時間がないというのに!)

 焦る彼女に茶々丸が小さな声で話しかける。

「マスター、あの方の消えるトリックについて少しわかったことがあります」

「! ほう、言ってみろ」

 そのまま小声で話し合う二人。
 それを見つめる千雨。二人の様子から何か口に出せない嫌な予感というものを感じていた。
 だがそれも、エヴァンジェリンがとった最初の行動で吹き飛ぶこととなる。

「あははははははは! そうか、そういうことだったか!!」

 おかしそうに大笑いする彼女。
 その奇怪な様に千雨は虚を突かれることとなった。

「まさか600年生きた私が、そんな子供だましのような手に引っかかるとはな!」

 キッと千雨をにらみつける彼女。
 その様子から先ほどの焦りは消え、どこか自身に満ちた表情をしていることが千雨にも見て取れた。

(うえ、もうばれたか? 早すぎだろまじで)

 たった二回しか披露していないあの技が見破られたかもしれない、という確信にも似た考えが千雨をよぎる。

「じゃあ、試してみるか?」

 しかし、だからと言って止めるわけにはいかない。
 もしかしたらハッタリや勘違いかもしれないと希望的観測から三度目の技を行使する。
 だが、

「後ろです!」

「ああ、氷爆(ニウィス・カースス)!」

 茶々丸の指示のもとエヴァンジェリンが真後ろに向かって手をかざし、魔法を放つ。
 すさまじい凍気と爆風が巻き起こり、冷気で発生した白い霧に一時視界不明瞭になるがそれもすぐに晴れることとなる。

「……まったく、少しは自身があったんだけどな」

 晴れたその先にいたのは体中の所々に霜をまとった千雨だった。
 制服の一部も破れたりして傷ついており、少々痛ましい姿となっている。

「いや貴様はよくやったよ、この私は二回も欺いたのだからな! ただ茶々丸の性能を侮ったのが運のつきだ」

 茶々丸はロボット、正確に称するならガイノイドである。
 その性能は目視で確認した人間の脈拍や体温などを検知するほど繊細なもので、人間には見えないありとあらゆるもの探知することができる。

「戦闘武装のすべてを機能停止にし、それで浮いたCPUを感知にまわしてようやく捉えることができました」

「いかに貴様がうまく消えても、大気の流れやわずかな摩擦音まで消しきれなかったようだな」

 それを聞いて千雨は、焦るでもなくなっとくした。

「ああなるほど、だから絡繰にばれたのか」

 そう、千雨はエヴァンジェリンが捉え
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