第35話 エイリス式紅茶会とトランプ外交 Ev15
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わりにバーター取引を」
「貴族議会の連中もそうですが、
大衆からもアドルフの身柄引き渡しの声は大きいですが?」
「解散コンサートの映像を見ました。
もしアドルフがドクツ民の為に自ら望んでエイリスに身を差し出したとしても――
ドクツ民は決死の覚悟で立ち上がり最後まで抵抗を続けるでしょう」
「……はい」
セーラも女王としてエイリス民の為に命を投げ出す覚悟があるだろう。
もしもエイリスが敗戦となれば国民を守るために身を差し出すつもりもあるかもしれない。
しかし自ら先陣を切って戦う女王騎士は人々から絶大な支持と称賛を集めていた。
ロレンスも女王に忠誠を誓った誇り高き王宮騎士の一人だ。
敵国が女王の身柄を奪おうとするのであれば、命を賭して最後まで女王の盾となる覚悟がある。
だからこそ、たった一人の女の子を守ろうとするドクツ民に騎士としての姿を見た
偶像を讃える彼らを見て自らの騎士道精神が奮い立つのを感じたのだ。
「では、そのようにチャーチル卿に伝えて下さい。
女王セーラはアドルフの亡命を容認すると――」
「御意。ただちに手配いたします」
――――グリンガム宮殿、エイリス式庭園――――
王宮騎士で艦隊指揮官の権限を与えられた者を騎士提督という。
その中で「The Four Horsemen」(四騎士)と呼ばれる特別な存在がいる。
女王の守護騎士“親衛隊騎士提督”ジョン・ロレンス
静かなる猛将“東洋征伐艦隊司令官”ヴィクトリー・ネルソン
先代女王から仕える“欧州奪還艦隊司令官”クルード・モントゴメリー
不沈空母“エイリス帝国宰相” ヒュー・キャズウェル・チャーチル
日英停戦交渉のエイリス側の代表者はチャーチル卿だ。
原作ゲームには登場しない人物だが、猫平宰相並みの傑物だろう。
知英派の戸塚軍医も“遅漏”だと警告していた。
外交交渉はボクシングにも似ている。
交渉中に、うっかり機密を漏らしてしまったでは済まされないのだ。
ナイーブなメンタルの持ち主には務まらない。
どちかといえば僕はトリッキーなアウトボクサーだろう。
チャーチル卿はガッチガチのインファイターだ。
壮絶な打ち合いとなれば、先に音をあげるのはこちらだ。
エイリス帝国は宇宙史的なお国柄として外交政策に強いだけはある。
公式の交渉はインファイターのチャーチル卿が担当。
非公式の会談は技巧派アウトボクサーと、リングに送る選手を使い分けている
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