アージェント 〜時の凍りし世界〜
第三章 《氷獄に彷徨う咎人》
皇帝
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高い資質を宿していた暁人は、戦闘のみならず父親の研究にも興味を示し、自身が造られた存在だと知った時も、忌避するどころかより技術的な話までするようせがんだと言う。研究者としても、魔導師としても、どちらを選んでも大成するだろうという白峰日暮の言葉は、親の贔屓こそあれ、誇大であるとは誰も言えなかった。
暁人が嘱託魔導師として実戦デビューを飾ったのは新暦63年の冬。当時未だ10歳の暁人はしかし、正しく無双とも呼べる活躍を見せ、着実に実績を上げた。魔導師ランクこそ低い魔力量が響きAランクに留まっていたが(儀式魔法等の発動が出来なかった為)、実際の戦闘能力はAAAランクに匹敵し、政戦両略のスーパーエースとして、管理局への正式な勧誘もひっきりなしに行われた。
「……私が彼と出会ったのはそんな時だ。当時私は、闇の書を封印する術を模索する最中、友人の息子が類い稀なる凍結系魔法の使い手だと聞き、興味をもった。」
「それが、白峰暁人ですか。」
「その通りだ。クロノ、君の持つデュランダルと、インストールされた《エターナル・コフィン》はそのどちらも、彼の魔法とデバイスを参考にして、彼の父親に作ってもらったものだ。」
「デュランダルが……!?」
「アージェントの魔法には広域空間に影響を及ぼすものが多い。ビットによって効果範囲を限定し、その分内部の魔力効率をブーストするというアイディアは暁人君が出したものだった。……彼は自分の事を非才だと卑下していたが、とてもそうは思えなかった。」
次元航行艦アルビオンに座乗し、幾つかの世界で経験を積んだ暁人は、新暦65年、妹の氷雪の容態が急変したとの連絡を受け、アージェントに帰る。白峰暁人11歳、氷雪は4歳の時の出来事だ。
生来その身体に宿る過剰な魔力が行き場を失い、彼女自身を蝕んでいたのだ。これを期に暁人は管理局からのスカウトを正式に辞退、嘱託登録も解除して、彼の父親と共に、妹の治療の為の研究に没頭したのだった。
次元航行艦アースラ
「………以上が、白峰暁人の過去について判明している全ての事だ。」
アースラの会議室に重苦しい沈黙が訪れる。皆、どう反応していいのか分からないのだろう。彼が造られた存在である事、自分達と知らない所で縁があった事、彼の能力の根元。クロノとて最初は言葉を発する事は出来なかったのだ。
「………その後、新暦67年、彼が誕生日を迎えた正にその日に、妹の魔力暴走事件が起こり、両親は死亡、彼ら兄妹も死亡とされていた。……が、実際には生きていた。そして失踪した……そして今、恐らくは妹の治療の為、スノウスフィアを集めている………。」
クロノの話す推論は、概ね正しい。暁人の目的が氷雪の治療にある事は
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