第2話 スーパーヒロイン「ヒルフェマン」
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ビングでニュースを見ている頃だ。
それなのにここまで彼女が気を張っているのは――スーツの下が全裸だからだ。
人命救助という自身の使命を果たした以上、これ以上このスーツを纏う意味はない。無駄にスーツの力を使わない、と決めているからには、帰宅すればすぐにそれを解除するのが筋だ。少なくとも、本人はそう捉えている。
だが、今の彼女は風呂場から咄嗟にスーツを着用して飛び出してきたため、その下にはブラジャーやパンティーすらない。この摩訶不思議なスーツを使っての人命救助活動は、彼女と彼女の祖父がこの町に来た頃から続けてきたことであるが、下着も穿かずに出動したケースは今回が初めてなのだ。
いつもなら下に普通の服を着ているから、すぐさまスーツを解除できているはずなのに、今回ばかりはそれがままならない。それもそのはず、彼女はまだ十五歳の思春期真っ盛りなのだから。
――それでも、彼女は自分の決めたことを曲げたくはなかった。そんな頑固なまでの真っ直ぐさは、彼女の取り柄でもあり、欠点であるとも言える。
故に彼女はその場でスーツを解除し、自室のタオルで身体を巻いてから風呂場に戻ることに決めた。脱衣所には着替えを置いてあったので、取りに行かなければならないのである。
しかし、その判断はこの時の彼女にとって、最大のミスを招く結果となる。同時に、この物語の起点にも繋がるのだ。
まず、ブレスレットに「着鎧解除」と囁く。すると、それに呼応したかのように輝くスーツが、光の幕と化してブレスレットの中に収縮していった。
その光が収まる頃には、彼女は風呂場にいた時と同じ、白い肌をさらけ出した美しい裸身となっていた。すぐさま頬を赤らめ、慌ててタオルを取ろうとタンスに手を伸ばす彼女。
――だが、その手は目的の物を掴む瞬間に、ピタリと止まって動かなくなってしまう。
気配を、感じたからだ。
そしてソレに連なるように、話し声が聞こえてくる。
「待て、待つんじゃ龍太君! わしの話を聞いてくれぇ!」
「いーや! もうゴロマルさんの頼みといえど、これ以上看過は出来ぬ! 今日という今日は、その孫娘さんとやらに話をつけさせてもらうぞ!」
程なくして、バァンとドアがこじ開けられた音が鳴り響く。
その出所の方向を、恐る恐る振り向いた彼女。その視界に、非情(?)な現実が突き刺さる。
――彼女と同世代くらいの男の子が、呆然と立ち尽くしていたのだ。
……そう、彼女がスーツを収め、艶やかな肢体をさらしている、この光景を前にして。
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