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ソードアート・オンライン〜剣と槍のファンタジア〜
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1章 すべての始まり
8話 暗闇に光る紅き怪物
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んでいるプレイヤーの誰一人の耳にも届かなかった。


 コボルトロードは、その巨体に似合わぬほどの速さで、垂直にとんだ。そして、その着地地点に、竜巻のようなものを巻き起こした。カタナ重範囲攻撃“施車”。それは、C隊全員のHPをイエローまでもっていく。だが、それで終わりではない。

 彼らの頭の上には、回転する黄色い光がある…スタンしているのだ。その効果は10秒ほどだが、即時のため、仲間が飛び込むしか対処方法はない。だが、誰も動けないでいた。そして、そのままコボルトロードは、次のスキルを展開させた。野太刀を地面すれすれの軌道から放ったのは“浮舟”。

 その名の通りに、ディアベルの体が宙に浮く。あの技を知っているキリトは、ああなったらどうしようもなく、体を丸め、防御に徹するしかないということを知っている。だが、そんなことを初見でやるのは無理だ。ディアベルは、空中で長剣を振りかぶり、ソードスキルを発動させようとするが、空中での不安定な動作のため、反応しない。

 ニヤリ、とコボルトロードは口をゆがめて笑い、スキルコンボ技を繰り出そうとする。







 その瞬間、キリトのコートを一陣の風がはためかせた。一瞬遅れて見やると、そこには、フードを深くかぶったプレイヤーが、キリトと同じアニールブレードを片手に、ボスに向かって疾駆していた。リアだ。


 上、下と、ディアベルは連撃を受ける。そして、最後の突きを放とうと、コボルトロードが腕を引くのと、リアが地面をけるのとほぼ同時。リアのアニールブレードが黄緑色に光り、弾丸のようなスピードで、宙に残像を残しながら迫る。あれは片手剣突進技“ソニックリープ”だ。射程はやや短いが、上に射程を向けられる。



 いける。キリトはそう思った。いや、ここにいる全員がそう思っただろう。






 …だが、無情にも、コボルトロードの突きまで、あとこぶし一つ分ほどの距離が足りなかった。それはディアベルにクリティカルヒットし、20メートルほど吹っ飛んで、センチネルと対峙していたキリトのそばの壁にぶち当たり、ずるずると落下する。

 キリトは、ツカサが跳ね上げたセンチネルに渾身の一撃を振るうと、爆散エフェクトが響くのを待たずに、ディアベルに向き直った。

 ディアベルは、一瞬顔をゆがめた後、わずかに唇を動かした。

「…あとは頼む、キリトさん。ボスを倒」

 言い終わることなく、その体はポリゴンのかけらとなった。





 

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