第二部 英雄たちの策動
死線
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躱し、光の槍を消滅させる。
『眼』の恩恵のおかげでかろうじて攻防が成り立っているが、そろそろ体力も底を突き始めている。せめてもう一人、戦線から離脱してくれれば楽なのだけど――
「二人とも離れて!」
突如響いた声に、赤龍帝と木場祐斗が反応して飛び退る。はっと上を見上げれば、工場の中でも屋根のないところに来ていて―――天がカッと光る。
反射的に飛び退った私の目の前で、極大の雷光が炸裂する。衝撃波が私の全身を叩き、飛び散った破片で頬が切れる。
「……女王、雷光の巫女…か」
だけど、あの威力ならちょうどいい。あれに誰か一人でも巻き込めれば……
そう考えている私の思考を絶つように、再び突貫してくる赤龍帝と木場祐斗。それをいなしながら、策を考える――――よし。
打ち込まれてくる聖魔剣を弾き返し、突き放す。と、その時。転移装置に魔力がたまったのを確認する。
後は、起動さえすればすぐにジャンプできるが―――簡単に逃がしてくれるほど、甘い相手ではないだろう。
赤龍帝の拳に触れないように慎重に体捌きで躱す。確か、赤龍帝には触れた女の衣服を壊す攻撃があったような―――あとは、女性限定で胸の内を読む能力だっけ?
赤龍帝から魔力の空間が広がるたびに、私の力で魔力そのものを打ち消しているからまだ発動はされてないみたいだけど。いずれ捕まるのは間違いないと思う。
聖魔剣と斬り合う。さあ、そろそろ来るはず。一瞬の計算違いが命取りになる上に、一度失敗すれば同じ手は食わないだろう。ここで決めなければ。
「二人とも離れて――雷光よ!」
天に雷光が奔り、またしても二人が離れようとするが―――今度は、私が前進して木場祐斗の剣を掴む。刃の部分を素手で掴んだため、手のひらから血が流れるが我慢する。
そのまま剣を抱え……渾身の力で、後ろに引っ張る。体勢を崩した木場祐斗の背中を押すと、雷光が―――
「木場ァァァァ!!」
その寸前。赤い鎧が飛び込んだ。天から降る雷光が、その身を焼いて爆ぜる。
「イッセー君!?」
「カハッ……!」
その身に雷光を受けた赤龍帝が膝をつく。作戦はまあ、成功と言っていいだろう。
私を狙う雷光が落ちてくる瞬間に、相手をその位置へと無理やり移動させる。雷などの自然現象は、魔力で発生させているといっても発動途中でコントロールすることは難しいはずだ。だからこそ、私のいる所を狙って落とした雷の当たる位置に無理やり移動させてやれば、確実にあてることができる。
私としては、ここで防御力の低い木場祐斗を落とせれば最良の結果ではあったけれど……赤龍帝にダメージを入れれたのは悪くない結果だ。
「イッセー!?」
「イッセー君!?」
「だ、大丈夫っす……すぐには立てそうにないですけど」
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