第二部 英雄たちの策動
二人だけの…
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ような、純白のドレスを着た文姫の姿だった。
黒髪と闇色の瞳とコントラストを描く、目の覚めるような純白の、シンプルなドレス。
「…どういうことだ」
周りを見渡してみれば、同じようなドレスがあちこちに展示されている。
上の方にも目を向けてみれば『ウェディングフェア』という横断幕があった。
なるほど、確かにここならあの衣装も不自然ではない。不自然ではない、が―――
「…四織、どういうことだ」
「着てみないかって言われて。断るのは、悪いかなって」
似合う?と首を傾げる彼女の姿は、今まで見たことがないもので。
普段は絶対にしないであろう、豪奢な服装とのギャップが印象的だった。
「ああ、似合っていると思う」
「……ありがとう」
いつも通り返してやれば、笑みが深くなる。感情が心の器から溢れて、そのまま表情となったかのような笑顔。
そんな笑顔に引き付けられたところで、ふと第三者の声が届く。
「彼氏さんも折角ですし、着替えてみますか?」
「……いや、俺はい」
「曹操のも、見たい」
店員からの予想外のアクションに断ろうと声をあげようとするが……その声を遮るように、文姫が小さく呟く。
普段はこういったことに興味を示さず、確たる意思表示もしない文姫だが。今日はどうやら、いつもとは違うようだ。
―――その姿が滅多にないものだからこそ、叶えてやりたいと思ってしまうのは俺の弱みなのか。
半分以上、諦めに染まった頭で考える。
「よろしければ写真も撮られませんか?飾らせていただけるならお会計2割引ですよー?」
その後。俺が着替えて写真撮影に応じたかどうかは、俺と彼女しか知らない。
ただ。珍しく、文姫が表情豊かだったことだけは、確かだ。
◆◇◆◇
少し疲れた出来事はあったけれど、私たちは適当なところで済まして散策をしていた。
クレープ屋を見つけた私は、少し周辺を歩き回りたいという曹操と、待ち合わせ場所を決めて合流することにした。多分、この町を見て回るのだろう。
もともと、護衛として一緒に来たんだからついていくと私が言っても、護衛のことはいいから楽しんで来いと送り出されてしまった。ずるい。私がどうすれば引き下がるか、よく知っているんだから。
「悪いねえ、ミックスベリー味は売り切れなんだよ」
「ん〜……じゃあ、これとこれで」
クレープ屋さんで、メニューにあったミックスベリー味を頼むも売り切れで。
仕方がないから、曹操の分も合わせてもう一つ買う。ストロベリーとブルーベリーだ。曹操はブルーベリーのほうが好きかな?
町の人々の話を小耳にはさみながら、通りを歩く。
「あ、あのクレープ屋……か、会長、俺たちも…!」
「何を言っているのですか。行きますよサジ」
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