第二部 英雄たちの策動
四織の受難
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じめる。引きずられないように、慌てて付いていく。別に手を繋ぐのは初めてではない。二人で放浪していたころは、難所などは助け合って突破したものだし。
こうやって歩いていること自体はいつも通り。だけど―――少しだけ、面白くない。
「……二人だけ、なのになぁ…」
ぽつりと呟いた私の声は、風に溶けて消えて行った。
◆◇◆◇
「(………ああ、そういえば)」
ぽつりと呟かれたその言葉に。この町に来てたから感じていた違和感がストンと腑に落ちた気がした。
今改めて見れば、本当に微かにだが不満そうな色が見える気がする。
……全く。いつもならばこんなことは気にならないが、相手が文姫だからか。
「……行くぞ、“四織”」
言い捨ててさっさと歩きだす俺に、彼女は少しだけ驚いたように息を詰め……
「…うん」
小さくだが、本当に嬉しそうに笑った。
それを視界に収めながら、手を掴んで歩く。行先はもう決まっている。
―――別に言われたからというわけではないが。何も買わずに帰った場合、ジャンヌが何かしら言ってくるのは確実だろう。
そう思いながら歩を進める。しばらく歩けば見つかるはずだ。
ああそうだ、ついでにこの町もしっかり見ておかなければ。もともとはそのために来たのだから。
歩くこと十数分。文姫を連れて行ったのは。
「……?」
「いらっしゃいませー」
普段の俺ならば絶対に寄りつかないような、大きな服屋だった。
戸惑う文姫を連れて中に入る。店の中は様々な衣服が所狭しと並び、客でにぎわっている。
そんな中を、戸惑いがちに握ってくる手を引っ張って歩く。彼女のほうもきょろきょろとあたりを見回しては、首を傾げている。そんな姿を見て、並べられている衣服と見比べる。
「(…なるほど。文姫がこんな衣装を持っているというイメージは、なかなか思い浮かばないな。もっと着飾れば、そこらの男など一ひねりにできるくらいの器量はあるだろうに、勿体ない)」
もともと、こういうものに興味が薄いのだろうが。少しはこういうものを持っておくのもいいのではないか。
店員を手招きし、近寄ってきたところで彼女を指差す。
「すまないが、この娘に似合いそうなのをいくらか見繕ってくれ」
「……え?」
「かしこまりましたー!」
店員が嬉しそうに答えて、有無を言わさず彼女を連行していく。
それの後についていきながら、ふと一つの服を手に取る。すっきりとしたデザインで、彼女が好みそうなシックな色合いの服だ。
「…あとで着させてみるとしよう」
◆◇◆◇
「おお〜、お客様ってば結構着痩せするんですねー。それだとこんな服も似合うと思いますよー?」
「は、はぁ…」
現在。曹操の意外な発言と共に試着室まで
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