第一部 出会い
伏籠
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感情を知ることができたのも曹操のおかげだ。いまだに慣れないけれど。
なんとなくいい雰囲気になった私たちの耳に微かな風を切る音が響く。
「……まずい」
「?」
次の瞬間、私は曹操に押し倒され草むらの中に組み伏せられた。
―――曹操、手が胸に触れているんだけど。
巨大な影が宙を旋回する。咄嗟に草むらの中に伏せたが、見つからなかったという保証はない。
最悪の場合戦闘も覚悟しなくてはならないな。
下級のドラゴンでも聖槍があればなんとかなるが、それでも下手に刺激して戦いたくはない。というよりもドラゴンを下手に刺激したくはない。戦うとなれば悪魔のように聖槍でアドバンテージがあるわけでもないし、今の俺の実力では無傷で勝利は難しいだろう。
「曹操…………?」
「静かにしろ、あれに見つかれば命はないぞ」
組み敷いている四織が不思議そうな声音で問いかけてくるのに少々強めの言葉でくぎを刺す。
まさか聞こえているとは思いたくないが、相手は異形。馬鹿げた聴力を持っていたとしてもおかしくない。というか、間違いなく持っていてしかるべきだろう。
声音から真剣さを読み取ったのか、彼女が大人しくなる。
それに安堵しながら上空へとわずかに意識を向ける。
先ほど見えた影はいまだに旋回を続けている。おそらくは領域の定期的な確認だろうが、それにしては随分長い間この場所近辺を旋回している気がする。
…まさか、気づかれたか。ドラゴンと戦うのは本意ではないが、いざとなればやるしかない。腕の中の彼女を抑えつけながら少しだけ体から力を抜く。何が会ってもすぐに動けるように。
件のドラゴンはしばし上空を旋回したのち、飛び去っていく。やれやれ。どうやら、気付かれたわけではなかったようだ。
「あ………」
ほっと一安心すると同時にわずかに熱い吐息を感じる。
視線を向けてみれば、視界に映るのはほのかに上気した感じのある彼女の顔。
心なしかいつもより体温も高いような…
そこまで考えたところで改めて俺たちの状態を顧みる。
草むらで半ば四織を押し倒したような状態の俺。
腕の中には少し華奢ながらも十分に柔らかな曲線の感じられる体があり……俺の片方の手は、彼女の胸の上に置かれていて―――
「す、すまない!」
そこまで考えたところで慌てて離れる。危険を避けるために仕方がなかったとはいえ、少々無遠慮な行動をしてしまった。
謝られた彼女は少し上気した顔のままふるふると首を横に振る。
その動作がいつもよりほんの少しだけ、重く見えた。
少々気だるげな動作、ほんのり上気した頬、少し高く感じた体温。
これはまさか。
「……風邪でもひいているのか?」
問いかければ、居心地悪げに眼をそむける。
その反応でバレバレなのには気が付
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