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雲は遠くて
134章 信也と詩織のクリスマス・イヴ
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134章 信也と詩織のクリスマス・イヴ

 12月24日、日曜のクリスマス・イブの夜。

 信也と詩織は、二人とも、(あたた)かなコート姿で、
港区北青山三丁目、東京地下鉄(東京メトロ)の、
表参道駅(おもてさんどうえき)で下車して、表参道の舗道(ほどう)を歩いている。

 片道2車線、(くるま)や人々が行き交う、表参道の、
1.1km全域の街路樹には、
2017年の今年、7年ぶりに、イルミネーションが点灯している。

 欅並木(けやきなみき)150本を、消費電力の少ないLED90万球が、
(あたた)かみのあるジャパンゴールド色に(いろど)っている。

 今年は表参道が整備されて90年になるので、LED90万球が装着された。

「わたしが憧れているのは、ずーっと、マライア・キャリー、一筋(ひとすじ)なのよ。

「マライアの歌はやっぱり、最高だと思うよ、詩織ちゃん。
おれは、そんな詩織ちゃんが、やっぱり、大好きだなぁ。」

「ありがとう、しんちゃん。じゃあ、しんちゃんの好きなヴォーカリストは誰になるのかな?」

「おれって、いろんなヴォーカリストを、
いいなって思うからね。特定できないんだよね。欲ばりなのかもね。あっははは。
でも、そうだね。やっぱり、子どものころに強烈な影響を受けたっていえば、
ビートルズのジョン・レノンとかポールマッカートニーとか、
レッドツェッペリンのロバート・プラントとかかな。あっははは」

「やっぱりね、でも、ロバート・プラントさんも、のどを痛めたっていうから、
しんちゃんも気をつけないとね!」

「ありがとう。詩織ちゃんもね。歌っていると、つい精一杯に叫んだりして、
シャウトしたくなるんだよね。だから、お互いに、のどには気をつけようね!」

「うん、そうよね、しんちゃん。しんちゃんがお勧めの、福島英(ふくしまえい)さんの、
ヴォーカルトレーニング方法は、のどにもやさしくって、わたしも、とてもいいと思っているの」

「おれも、ヴォイストレーニングは、独学だけど、福島英さんの本にはお世話になっているのさ。
あっははは」

「しんちゃん、今夜は、アンドレア・モティスさんのクリスマス・ライヴに行けるなんて、
夢のようだわ!(うれ)しくって、昨夜なんかなかなか眠れなかったんだから。あっはは」

「おれも、今夜のイヴは、詩織ちゃんと素敵なジャズを聴きたかったのさ。あっははは」

 これから二人が行く、表参道駅から歩いて8分ほどの、
南青山のジャズ・クラブ『ブルーノート東京』では、
アンドレア・モティスのライヴがあった。

 世界的にも注目されている、彼女はキュートな歌声のジャズシンガーであり、
トランぺッターでもある。

「詩織
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