第一部 出会い
月下夢想花
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も“出所不明”。
神に与えられた力も、悪魔の力も、それとは関係ない異能の力も。少女の前ではすべてが無に帰した。
―――強すぎる力は、畏敬を超えて恐怖の対象にしかならなかった。
だが、家の者たちはその力を使って更なる権力を得ようとした。
少女は幼いころから地下室に閉じ込められ、来る日も来る日も人を、生物を殺す術を学んだ。
そして一通りの技術を覚えた頃………悪魔の前に放り出された。
―――必死だった。初めて、生に執着して、あがいた。
ボロボロになりながらも、自分の力で悪魔は滅びた。
そこからは、ひたすらに異形の者と戦う日々。
いつしか血に塗れることも苦にならなくなっていき、夢に起こされることも少なくなった。
血の温度を感じなくなってもうどれくらいの時間が経っただろう。
それはもう、確かに感覚も麻痺して。一部だけれど確かに狂っている。けれども―――
「……誰か、誰か。…………助けて」
……たった一片、たった少しだけれども残っていた「心」
それが発した小さな囁き。毎度毎度繰り返される、小さな慟哭。
それはいつもの通り、泡となって消える。
―――――はずだった。
派手な侵入となった。襲い掛かってくる男たちを槍で弾き飛ばし、時には殺して動けなくする。
頭の中に昼間見た見取り図を思い浮かべる。地下スペースまでもう少しのはずだ。
だが、その入り口が見当たらない。抵抗を排除しながら探していく。何個目かの扉に手をかけた時
『―――けて』
小さな声が、届いた気がした。
そのまま、力強くドアを引く。
その先には、漆のような闇が広がっていた。
―――遥か上の入り口で、扉の開いた音がする。
「―――――?」
今日はもう何もないと言われ追い払われたのが一時間前。
なにか緊急に処理しなければいけない案件でもあったのだろうか?
基本的に、この地下隔離部屋にたどり着くためには階段を上ってはるか上にある入口の扉を開けなければならない。
階段自体も長いうえに暗いので危ないと言えば危なく、基本的に扉を開くのは少女に依頼を持ってくる人だけだ。
階段を下りてくる音を諦めの境地で待つ。一応、形だけの寝床から身を起こす。
ついに階段を下りる足音が止み、部屋のすぐ外にいるはずの世話係達の声が聞こえる、
一呼吸おいて、扉が外側に開かれる。
―――そこに立っていたのは、いつもの中年の男ではなく。
漢服らしきものを羽織り、槍を肩に担いだ黒髪の少年だった。
驚きに身を固める少女の姿を、その瞳が捉える。
「………ああ、ようやく見つけた」
そう言った少年は、少女のほうへと近づく。
驚きに固まっている少女の目の前まで近づき、止まる。
身を固くする少女に、目の前にいる槍を構えた少年がすっと右手を差し出
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