第5章:幽世と魔導師
第138話「前世の因縁」
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言うのは……」
「……鵺はね、ある一人の陰陽師を殺し、その力を取り込む事に成功したの。その陰陽師は殺された時、痛みも、苦しみも、嘆きも味わされたの。…でも、泣く事さえ、許されなかった」
「え……?」
「思念だけが鵺の中に残されて、ずっと皆がいる場所に帰りたがってた。……終ぞその願いは叶わなかったけどね」
どこか遠くの出来事を思い出すように、鈴は語る。
「陰陽師の力を取り込んだ鵺は、さらに脅威を増したわ。何せ、取り込まれた陰陽師にとって“死をもたらした妖”そのものだもの。その事実もあって、並の陰陽師では絶対敵わなくなったわ。……それが、さっきのあの言霊」
「あれが……あの、悲しい、“声”が……」
「……まぁ、その後一人の陰陽師と、その陰陽師が従えた式姫によって倒されたのだけどね」
そういって鈴が思い出すのは、一人の妹弟子。
それと、彼女が従えていた、素直じゃない優しい草の神と、彼女をお嬢様と呼び慕う天狗、薔薇の名を冠する吸血姫、慈愛の力を扱う姫と言った式姫を想起する。
「……もしかして、その、取り込まれた陰陽師が……」
「……そう。それが私。それ以来は、幽霊として留まっていたのだけどね」
「だから、鵺に対してあそこまで……」
「別に、もう気にする必要はないわよ。私としても、あの時の報いを与えられて満足しているし」
「……そう、なんだ」
本人が気にしていないなら、いいのかなと、那美は自己完結する。
「簡潔に纏めれば、私が幽世の門とか式姫について知っているのは、元々当時の人間だったからって言うのに限るわね。だから、色々知っているの」
「だから私が知らない霊術とか、私の知り合いが使ってる霊術とかも使えたんだね」
「そう言う事」
ずっと謎だった鈴の生い立ちが判って、那美はどこか腑に落ちた気持ちだった。
「……って、そうだ。忘れてた。鈴ちゃんの生い立ちが分かったのは良いけど、幽世の門が開いてからどうしてたの?一瞬で私の所に来てたけど……」
「あー、そうね…。妖の情報については、夜中の時点で出てたのは知ってるわね?」
「うん」
「その時点で至急の指令が私に下されてね。青森の方まで行ってたの。そこにあった門の守護者の大鬼を倒して門を封じて、次に岩手県まで下って……悪路王って言う妖に協力を持ち掛けたの」
「悪路王……?」
“さすがに現代ではあまり知られてないか”と思い、鈴が説明しようとして…。
「……ふん、陰陽師も弱くなったものだな」
「っ……!?」
「くぅ…!」
その場に悪路王が顕現した。
「……貴方、態と驚くように出たでしょ?」
「肝が据わっていれば大した事はないはずだ」
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