第5章:幽世と魔導師
第138話「前世の因縁」
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「……馬鹿みたいに声を上げる程、余裕を失くしたのね。どう?久遠の霊術は、お前の体を見事に焼いたでしょう?安心しなさい、トドメは私よ」
「ッッ……!」
目の前に飛び上がり、刀を振りかぶりつつ鈴は鵺に言う。
“生意気な”と鵺は思ったのか、それを飛び退いて躱し、鈴を睨んだ。
「鈴ちゃん……っ!」
「………」
協力しようとしている時に、前に出ている鈴に那美は声を掛けようとする。
だが、鈴は手で制した。“決着は自分が付ける”と言わんばかりに。
「……睨みたいのはこっちよ。……私の顔を見忘れたとは言わせないわよ!!鵺!!」
復讐するかのような、それでいて黒くない感情で鈴は鵺を睨み返す。
それは、一度負けた相手に、力を付けて再び倒そうとするような眼だった。
「その嘆きも、苦しみも、全て私が味わったものよ。我が物顔で使わないでちょうだい!」
「ッ!?」
瞬間、鈴の足元が爆ぜる。
否、厳密には爆ぜたように見える程、鈴は一気に駆け出したのだ。
「はぁっ!」
駆け、刀を振るう。
刃が鵺の皮膚を切り裂き、鵺は爪を振るってそれを振り払う。
だが、鵺の攻撃は素早く飛び回り、躱される。
「は、はやっ……!?」
「くぅ……!」
攻撃は悉く躱し、確実に反撃を繰り出す様を見て、那美は驚く。
今まで、那美も鈴の全力を見た事がなかった故の驚愕だ。
ギィイン!
「っ…!」
「ォオオオオオオオオン!!」
しかし、全ての攻撃が躱せる訳ではない。
爪の一撃を躱しきれずに、刀で受けて鈴は後退する。
間髪入れずに鵺は咆哮を上げ、霊力による雷の雨を降らす。
「甘い!」
―――“速鳥”
それに対して鈴は術で自らの脚を強化し、一気に肉迫する。
ジグザクに飛び回る事で雷を次々と躱し、再び刀を振るう。
まさに気焔万丈、獅子奮迅、疾風怒濤の如き勢い。
何を彼女をそこまで駆り立てるのか、那美達にはわからなかった。
「っ、ぐぅっ!?」
「っ、鈴ちゃん!」
だが、鵺もただでは終わらない。
蛇の頭を持つ尻尾を生やし、手数を増やす事で鈴の体を捉えたのだ。
「くっ…!」
吹き飛ばされた鈴だが、すぐに体勢を立て直して着地、即座に駆け出した。
この時点で、那美にも久遠にも割り込む隙はなかった。
完全に鈴と鵺だけで戦闘の空間が形成されていた。
「ぁああっ!!」
ザンッ!!
一際強力な斬撃を浴びせ、鈴は一度間合いを取った。
―――“東の方角を見ている”
「何を……」
「………」
傷だらけになった鵺は、唐突に東の方角を見つめだ
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