曇天
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て母はセブンとは会いたがっていないということと、レインとしてはもちろん再会して欲しい……が、母がセブンに会わせる顔がない、というのも分かるということ。母にセブン、どちらも多忙のために会う機会はなく、VR空間での対面を勧めたものの母には拒否されたということ。
「わたしたちは仲良く再会できたから、お母さんも……とは思うんだけど、なかなか、ね」
「……レインの母さんは、VRとかには詳しくないのか?」
「え? う、うん……」
お母さんがVRについて知らなかったから、セブンがどれだけ天才か分からなかったのも、離ればなれになった理由の一つだから――という言葉を、レインは必死になって内心で飲み込んだ。例え母がVR空間について詳しかろうと、母はセブンの英才教育には反対していただろうから。
「それがどうかしたの?」
「いや、会うだけなら、《オーグマー》を使えないかなって。騙し討ちみたいになるけど……」
言いにくそうに躊躇するショウキだったが、レインには何となく言いたいことは伝わっていた。VR空間といった最近のテクノロジーに詳しくない母と、騙し討ちという言葉の意味するところは。
……母に《オーグマー》を使わせて、なし崩し的にセブンと会話をさせようというのだ。今まで海外にいたとはいえ、セブンはもちろん《オーグマー》について把握しており、面白いガジェットだと語っていた覚えもあって。直接の対面は出来ないが、セブンなら《オーグマー》を十全に使った機能で再会できるだろう。
「ありがとう、ショウキくん! ちょっとセブンにも話してみるね!」
「だけど、これじゃ――おい!」
それだけショウキにお礼を言い残すと、レインはいてもたってもいられずに、リズベット武具店でログアウトすると。数時間ぶりに現実世界のベットで飛び起きて、すぐさまセブン――七色のプライベート用のアドレスでメールを送る。幸いなことに七色も仕事中ではなかったようで、すぐさまメールの返信が届いていた。
「よっし……!」
七色からのメールに目を通してみれば、少し気乗りしないようだったが、それでも母と対面するために必要なことだと了承してくれたらしい。それからは母が帰ってくるまで、後回しにしていた朝の準備や午後の仕事の用意、担当する家事を終わらせつつ、妹に言われた通りに自身の《オーグマー》を調整して時間を潰しつつ。午後に待ち構える待望の仕事と、母と妹の再会に、虹架はソワソワと落ち着かないでいた。
「ただいま」
「お帰りー!」
そうして虹架が午後から夜まで仕事のため、いったん昼に帰ってくる手筈となっていた母の声が玄関に響いた。七色にメールを送って合図とすると、デコレーションされた《オーグマー》を片手に、虹架は玄関へと駆け出した。
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