Ready
Ready5 アトランティス
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
「世界の本当のこと」、何も分かってなかった。ごめんね。
だからってノヴァのせいなわけないだろう? むしろノヴァは俺に非合法な取り立てが来ないよう計らって、仕事も斡旋してくれてたじゃないか。
やっぱりルドガーってお人好し。一度はフったあたしまでそーやって気遣っちゃってさ。――ねえ、こんな言い方卑怯だって分かってるけど、あたし、あなたが好きだったよ。ルドガーとユリウスさん、二人が同じだけ好きだったの。
確かに少しばかり卑怯な言い方だ。
そう言ったらね、ユリウスさんに頼まれたの。子供を産んでくれって。あたしたちの子供が、ルドガーを救ってくれるようにするって。
! まさか……兄さんは、俺と同じことを……俺がエルにしたのと同じことをしたのか?
うん。あの人、よく言ったわ。「何であの時さっさと死ねなかったんだ」「あいつが死ぬくらいなら俺が早く死んでおけばよかった」って。その気持ちはいつまでもあの人の中から消えなかった。あたしじゃ、消してあげられなかった。
何て、ことを……兄さん……
産んだよ。女の子、一人。赤ちゃんの頃からぐずらない、手のかからない、静かな子だった。でもあたしが娘を抱いていられたのは5歳まで。そういう約束での結婚だったの。あたしが家を出て行って以来、娘を育てたのはウチの人と、あとアルヴィンとバランさん。戦い方、上手な嘘のつき方、まともじゃない知識と技を教えられて育ったのに、あたしはそう育っていく娘が愛しくてしょうがなくて、こうして知らないところで世界が終わっても、やっぱりあの子を愛してる。
知らないところで世界が終わった、か……俺もそうなのか?
そう。あなたの分史世界は、他の分史世界と一緒にオリジンが消去した。あなたの野望は叶わず終わったわけだよ、ルドガー。
――正史世界へ送り出した俺の娘は、どうなるんだ?
……ごめん。そこまではあたしにも分からない。あたしも娘が正史世界へ発った瞬間に世界ごと消えちゃったから、そのあとの出来事は知らないの。ここにルドガーが来るまでに何度も正史を見ようとしたけど、できなかった。
そうだった。今や君も立派に一児の母親だったな。一人娘が心配なのはお互い同じ、か。
…
…
…
そろそろ行こうか。
行く、ってどこへ。
そりゃあ、あたしたちは死んじゃったんだから、行くとこなんて一つでしょ?
……そうか。君は迎えに来てくれたんだな。そういうことなら、ああ、行こう。俺はノヴァにエスコートしてもらうべきみたいだ。
ふつー逆じゃない〜?
いいだろう、別に。どうせ二人とも普通じゃない死に方をしたんだ。
それもそうか――うん、そうだね。では参りますか、ルドガー君?
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ