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レンズ越しのセイレーン
Ready
Ready5 アトランティス
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「ひさしぶり。ルドガー」

 ダークスーツ、黒く染めた髪、黒い仮面。
 黒尽くしの元同級生は、昔と変わらない翠眼で、ノヴァをまじまじと見返した。





 どうして……何でノヴァがここにいるんだ。

 あ、その言い方ヒッドーイ。わざわざ迎えに来てあげたのに。こうなった理由だってちゃんと教えてあげようと思ったけどやめちゃおっかなー?

 迎え? いや、そもそも、こうなった理由? 君はそれを知っているのか。

 知ってるよ。別にあたしが何かしたんじゃないけどさ。旦那と娘がちょこっと関わっちゃったから。説明義務はあたしにあるかなって。

 ……結婚できたんだな。

 ちょ、その返しあんまりじゃない!? そういうルドガーこそ気づいたらラルさんみたいな美人ちゃっかりお嫁さんに貰ってるし!

 ちゃっかりとは何だちゃっかりとは! これでも清く健全な付き合いを重ねてようよう交際に漕ぎ着けたんだぞ! プロポーズまでは2年だ!

 意外と古風だ! あたしなんか通い妻までやったのにNoデートNoキスからのデキ婚だよ!? 何で兄弟でここまで違うのよ神様のばかやろー!

 ……待て。「兄弟で」? えーと。ノヴァ、まさか旦那というのは――兄さんなのか?

 うん。―――。っておーいルドガー? 大丈夫ー?

 ……悪夢だ。まさかノヴァが義姉(ねえ)さんになる日が来るなんて……

 よし。置いてく。もう置いてく何も教えてあげない一人頭抱えてなさいよこの親バカ義弟ー!!

 なぁ!? 待て、すまなかった、俺が悪かったからこの状態で放置するな!

何かもっとあたしに言うべきこと、あるんじゃない?

 あー…髪が伸びたな。

 うんうん。

 大人びた。

 うんうん。

 綺麗に、なった。

 うんうん。

 ……母親の、顔を、してる。

 ……うん。





 始まりはあなたが死んだ日。その日から世界は滅び始めた。――狂い出したの。ありがちな近未来SFのディストピアに一直線。

 ――ノヴァの世界の「俺」はどんな死に方をしたんだ?

 自殺だったってさ。ユリウスさんの代わりになって『橋』になって。

 『橋』のことまで知っているのか……

 『オリジンの審判』についてはユリウスさんが全部教えてくれたから。

 ……すまない。辛いことを教えてしまって。本当ならノヴァは何も知らなくていい立場だったのに。

 やめてよ。結局あたしが追い詰めちゃったんだもん。そっちこそ辛かったでしょ? 借金。

 まあ辛くなかったと言えば嘘になるが。

 ……あたし何も知らなかったから、ルドガーが目一杯辛い時に何度も督促の電話しちゃった。ユリウスさんから聞くまで
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