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真田十勇士
巻ノ百十六 明かされる陰謀その十三

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「そしてな」
「はい、戦になれば」
「存分に働け、ただな」
 大助にこのことを言うのも忘れなかった。
「真田家の者としてな」
「迂闊に命を賭けずに」
「そうじゃ、生きよ」
 このことを言うのも忘れなかった。
「よいな、最後の最後までじゃ」
「真田の者ならば」
「死のうと思うな」
「何としても生きて」
「想いを果たせ」 
 そうせよというのだ。
「よいな」
「父上がいつも言われている様に」
「その通りじゃ」
「やはりそうですか」
「人は必ず死ぬ、しかしな」
「命は最後の最後まで取っておくもの」
「恥を忍んでもじゃ」
「想い、志を果たす為に」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「生きるのじゃ」
「そして志を果たし」
「思い残すところがなくなればな」
「その時にですな」
「自害でも何でもせよ、しかしな」
「思い残すところなくであり」
「下手に自害はするな」
 その志を果たしてもというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
 大助はまた昌幸に答えた、やはり毅然とした若き日の幸村を彷彿とさせる顔で答えたのだった。
「そのことも」
「ではな」
「はい、それでは」
「源二郎、後は任せた」
 最後は幸村に話した。
「戦も右大臣様のこともな」
「その全てを」
「お主に任せた、そのうえでな」
「天下一の武士に」
「なれ、わしは天下一の寝返り者と言われたが」 
 武田家が滅んでからそう言われてきた、だがその彼とは違いというのだ。
「お主はな」
「天下一のですな」
「武士になれ、武士の道を歩め」
「さすれば」
「わしから言うことは何もない」
 こう幸村に言ったのだった。
「ではな」
「はい、これで」
「寝る、次に生まれ変わるまでな」
 全てを言い終えた昌幸はこれでだった。
 顔を完全に天井に向けると静かに目を閉じた、そして二度と目を覚ますことはなかった。その顔は実に穏やかなものだった。
 昌幸の葬儀はすぐにっつがなく行われた、その後でだ。
 昌幸に仕えていた家臣達はそれぞれ幸村に深々と頭を下げて言った。
「我等はこれで」
「原二郎様には申し訳ありませぬが」
「大殿もおられなくなりました」
「ではです」
「これで、です」
「お暇させて頂きます」
「その様に」
 こう言うのだった。
「上田に戻ります」
「源二郎様なこのままとなりますが」
「つつがなき様」
「お元気で」
「わかった」
 微笑んでだ、幸村は彼等に応えた。
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