第十一幕その五
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そうして五首程詠んでからお茶を飲んでいると皆こう言ってきました。
「五首ってペース早いね」
「まだ一時間程なのに」
「すらすら書いてるね」
「先生って詠える人なんだ」
「うん、謡えるけれどね」
それでもと言う先生でした。
「こんなに調子がいいのははじめてだよ、和歌も初心者なのに」
「前に英文の詩を書いていたせいかな」
「それで書くのも進めてる?」
「そうなの?」
「昔から和歌も勉強してたし」
「それでかな」
「うん、そうかもね」
こう言ったのでした。
「英文と学んでいたのがよかったのかな、いや」
「いや?」
「いやっていうと?」
「何か自然になんだ」
先生の思いとは違ってというのです。
「筆が進んでね」
「詠めているんだ」
「そうなんだ」
「だから一時間で五首も詠めたんだ」
「あっという間に」
「こんなに詩が出来るなんて」
本当にというのです。
「神様に書かせてもらってるのかな」
「桜の神様に和歌の神様に」
「そうした神様達に」
「そうかも知れないよ」
こうも言うのでした。
「この調子のよさはね」
「そういえばどんどん詠っている人多くない?」
「そうだよね」
「周りを見たらね」
「詠ってる人多いし」
「何首も」
「僕だけじゃなくて皆ね」
それこそというのです。
「調子よく詠ってね」
「満開の桜の下で」
「じゃあこれはね」
「桜の神様、和歌の神様がそうさせてくれてる?」
「先生も他の人達も」
「そう思えてきたよ」
こう皆に言います。
「ここはね、じゃあ一杯飲んだら」
「まただね」
「歌詠むんだね」
「そうするんだね」
「そうするよ、いやこのままいったら」
にこにことしたまま言う先生でした。
「二十首は詠めるかもね」
「百人一首じゃなくてだね」
「二十首だね」
「一人で一日そこまで詠えるって凄いよ」
「先生和歌の神様に愛されてるね」
「桜の神様にもね」
「いや、そうだとしたら有り難いね」
心から思う先生でした、お茶と一緒に出されている桜餅もとても美味しくてそちらも先生を楽しませています。
「正直楽しむつもりだったけれど」
「一首詠めるか」
「それが不安だったんだね」
「詠えないかもって」
「そうも思って」
「そうだったんだ、それがね」
先生の不安は杞憂に終わってです。
「詠めるね、それとね」
「それと?」
「それとっていうと?」
「いや、あちらの子だけれど」
見れば白い詰襟の学生服の子が先生の近くの場所に座ってしきりに和歌を詠っていっているのですが。
中々鬼気迫るお顔です、先生は中学生らしきその子を見て首を傾げさせつつ動物の皆に尋ねました。
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