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提督はBarにいる・外伝
ジュウコン提督、かく語りき
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「全てが特別な、忘れ形見のような、あまりにも思い出の染み付きすぎた古い指環があるとする。それを欲し求める女性が何人かいるとして、渡す渡さないも含めて、君ならどうする?」

 壬生森にそう問われ、暫く悩んだ提督は

「さてね。渡したきゃ渡せばいいし、最初のオンナに女々しく操を立てたいならそうすりゃいいさ」

 と応えた。

「おいおい、随分と投げ遣りな答えじゃないか?」

「だってそうだろ、その指環の元の持ち主との思い出は当事者同士、2人だけのモンだ。そこに他人が口を挟める余地はねぇよ」

 提督はそう言ってズボンのポケットから煙草を取り出して1本銜えると、火を点けて紫煙をフーッと吐き出した。

「他人から見たら何の変哲もない思い出でも、2人にとっちゃあ掛け替えのない思い出だったりする事があるだろ?それと同じさ。他人からすればただの指環……しかし当事者からすりゃあ何物にも替え難い思い出の品。それをどう扱うかなんざ、他人に聞く事じゃねぇやな」

 そう言って提督はTシャツをペロンと捲って見せた。

「ちょ、ちょっと!?」

「ななな、何をなさってるんですの!」

 いきなりの展開にテンパる叢雲と熊野の2人をよそに、提督は再び口を開く。

「別に俺の肉体美を拝め、ってんじゃねぇよ。見えるか?左の脇腹のトコ。切り創……というか刺し創があるだろ」

「あぁ、例の昔の女に刺されたとかいう傷か。」

「おうよ、ご丁寧に毒まで塗られてて死にかけたんだがよ……その昔の女ってのが、俺のミスで沈めた加賀でな」

 提督がポツリ、と呟いた言葉にしん……と静まり返る店内。

「まぁ、正確にはどっかの科学者が俺の沈めた加賀の魂を回収して他の加賀の身体に定着させたとか何とか、何とも嘘臭い話でなぁ……最初は信じちゃいなかったんだが、夜中に2人きりになって正面に立った時にピンと来ちまったのよ。『あぁ、こいつは間違いなくあの加賀だ』ってな」

 しみじみと、しかし噛み締めるように語る提督。それを黙って聞き入る壬生森達。

「昔の女に刺された傷だ、と言えば普通は不名誉なモンだ。しかしな、俺にとっちゃあこれもいい思い出だ。戒めにもなるしな」

「成る程、物の見方は人物と角度で変わる……という事か。道理だな」

 納得した、と言った表情で小さく頷く壬生森。




「それにこれは俺の知り合いの受け売りだが、過去の自分と決別するにゃ、何処にいるかよりも傍に誰がいるかが大事らしいぜ?それを基準に選べばいいんじゃねぇのか?」

 忘れ難い過去との決別には、周りの環境よりも新たな人間関係が大事、という事らしい。

「それかウチみたいにシステマチックにしちまえよ。条件が満たされたら渡して、受け取るかどうかは本人の
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