番外編 あなたにはヒミツ 〜鳳翔〜
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のんでくれるんだろう……』と思いました。厨房で配膳に勤しむ私から少し離れたテーブルで、あなたは、目を閉じ、静かにお味噌汁をすすったあと、まるでお風呂に浸かった瞬間のように表情をゆるめ……
『ほぉ……っ』
と、とても温かく、そして心地いいため息をついてくれましたよね。あの姿を偶然見た私は、その日から、食堂にやってくるあなたの姿を目で追い、そしてお味噌汁を飲むその姿を見つめることが、日課になりました。
『こんにちは。今日も来ていただけたんですね』
『は、はいッ! だって、とっても美味しいですから!!』
ある日、あなたにその日の献立を渡す私がつい声をかけた時、あなたは素っ頓狂な声で返事をしてくれましたね。きっと、『声をかけてくるはずない』と思っていた私が声をかけてきたから、びっくりしたんでしょうね。
……でも智久さん。白状します。あの時、私もとてもびっくりしたんですよ? あとからとても恥ずかしくなってきて、赤城とロドニーさんの前で、私は顔を押さえてもじもじすることしか出来なかったんですよ?
『……こ、声をかけてしまいました……っ!!』
『……鳳翔さん?』
『赤城? 鳳翔はどうした?』
『ぁあロドニーさん。なんか仕事が終わってからずっとこんな感じで、顔真っ赤っかでもじもじしてるんですよ』
『?』
『あー……どうしましょう……声かけてしまいました……ぁああっ』
『『?? ???』』
だって、私自身、あなたに声をかけるつもりなんて全然なくて、気がついたら、口が勝手に喋ってたんですから。あの後は大変でした。胸がドキドキして、あなたがお味噌汁を飲む姿がまぶたから離れなくて……緊張して、全然眠ることが出来ませんでした。だって、眠ろうとして目を閉じたら、あなたの姿が目に浮かぶんですもの。
……でも、それはあなたにはヒミツです。
ヒミツにしていることは、他にもありますよ?
私が食堂のシフトを離れてオフの日。私が晩ごはんを食べようと食堂に赴いて、あなたが食堂で一人でご飯を食べてるのを見つけた時、私の胸が大きくドキンとしたことを、あなたは知らないでしょう。
『……相席してよろしいですか?』
『いいですよ。よかったらどうぞ』
意を決した私はあなたと相席したのですが……俯いていたあなたは気付かなかったでしょう。あの時、お盆を持つ私の手が、緊張で少しだけカタカタと震えていたことを。
気付いてなかったでしょう。あなたが『食堂代表で、剣術大会に出ます』と言ってくれた時、私はうれしさで頭がどうにかなりそうでした。つい握ってしまったあなたの手はとても温かくて、ずっと握っていたくて……必死に頑張って手を離したことを、あなたは知らなかったでしょう。
少しずつ少しずつ、お味噌汁が温まり
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