番外編 あなたにはヒミツ 〜鳳翔〜
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なのですが……」
……え!?
「残念です……ではロドニーさんとソラールさんと神通さん、普賢院さんと、私だけで行ってくることにします……」
智久さんが来る……その事実を前に、包丁を握ってのんきにじゃがいもの下ごしらえをしてられるほど、私はおしとやかではありませんでした。
「赤城。前言撤回します」
「……はい?」
「今日の仕事は誰かに変わってもらいます。私も行きますっ」
次の瞬間、私の口はそう答えていました。いざという瞬間は、思考を離れて身体が動く……まるで、戦闘時の時のように、私の口は無意識のうちに、そう動いていました。
その後、その赤城似のミイラさんから『コンサート会場は休憩スペースでご飯が食べられるそうですよ?(チラッ)』と言われ、思い立った私は、コンサートの前にみんなで食べられるお弁当を準備することにしました。食材もそう残ってないし、時間だってないけれど、そこは長年培った腕で、やりくりしてみせました。オーナーも……
――厨房の食材、ちょろまかしてかまわんよ。
お前さんには、いつもお世話になってるんだ。
だからお前さんにも、幸せになってもらわにゃ
と言ってくれ、厨房の食材のいくつかを使わせてくれました。おかげで、とてもいいお弁当が出来ました。
お弁当の準備が終わったら、それを冷ます間に、お味噌汁を作ります。
「あ、鳳翔さん、お味噌汁ですか?」
「はい。飲んで欲しい人がいるんです」
私の隣で今日の当番を変わってくれた間宮さんが、私の鍋を覗き込んできます。すでにお出汁は取っている。私はその中に、準備していたわかめとお豆腐を入れ、煮立たせました。途端に私達の周囲に、カツオだしの良い香りが立ち込めます。
沸騰したところで一度火を止め、沸騰を沈めます。静かになったらお味噌を丁寧に溶き、再び火を入れます。沸騰させないよう、ごく弱火で、静かに、神経を注いで……
「わぁ……お味噌のいい香り……」
「……」
「鳳翔さん?」
「……」
ここは、絶対に気が抜けません。お味噌は煮立たせてしまうと、この素晴らしい香りが飛んでしまいます。私はあの人に最高のお味噌汁を飲んで欲しくて……私に気持ちを届けてくれたあの人に、私の気持ちを届けたくて、全神経をお味噌汁に注ぎました。
「……」
智久さん。私は今日、あなたに気持ちを届けます。あなたがチェロに乗せて、私に届けてくれたあなたの気持ちに、今日、私はお味噌汁で応えます。あなたが『美味しい』と笑顔で言ってくれた、私のお味噌汁で。
智久さん。はじめてあなたを見たその時から、私は、あなたがずっと気になっていました。
あなたがお味噌汁を飲むその姿を初めて見た時、『なんて美味しそうに私のお味噌汁を
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