暁 〜小説投稿サイト〜
チェロとお味噌汁と剣のための三重奏曲
10. あなたと二人で、いられる幸せ
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ーさんに対して『鳳翔さん、みんなの分のお弁当も作って持ってきてくれたのに……』とメッセージを送った。

 すぐに『すぽんっ』と音が鳴り、ロドニーさんからの返事が届いた。鳳翔さんと共に、彼女の返事を確認する。

――あ

 ……そこまで考えが及んでなかったみたいだ……まぁ、ミイラになってたからなぁ……頭の回転が鈍るほど、おなかをすかせていたのかもしれないなぁ……。

「……じゃあお弁当は、コンサートが終わってから、みんなでゆっくり食べましょうか」

 と鳳翔さんが提案し、僕も確かにそれしかないなぁと思った。本当は、終わった後は鳳翔さんとゆっくり二人でコンサートの話をしたい……とも思ったけれど、きっとこれからも、その機会はあるはずだ。

「そうしましょう。ロドニーさん、すごくおなかをすかせてたから、きっと喜ぶと思います!」
「ですね!」

 鳳翔さんのうれしそうな笑顔に心をほくほくとさせてもらい、僕はロドニーさんに再度メッセージを送る。

――コンサートが終わったらみんなで食べましょって、
  鳳翔さんが言ってます

 するとすぐに、『すぽん』という音とともに、ロドニーさんからの返事が届いた。

――やったー!!

 ……五歳児か? この、何の工夫も意地もないメッセージを臆面もなく送ってくる辺り、やっぱりあの人は、五歳児なのか? ロドニーさんの精神年齢にいささかの疑問をいだき、しかめっ面でスマホの画面を覗いていたら、再度『すぽんっ』という音が鳴り、ロドニーさんからのメッセージがまた届いた。

――やっぱり、私はお前たちが好きだ!!

 スマホの画面を見た僕と鳳翔さんが、目を合わせる、数秒の間見つめ合った後……

「「ぷぷっ……」」

 と吹き出した。鳳翔さんは僕よりも上品に、右手で自分の口を隠しながら。

「笑っちゃダメですって鳳翔さん……ぷぷっ……」
「いや……なんだかロドニーさんがおかしくて……ぷぷっ……」

 ……まぁいい。ロドニーさんがこうやって僕らにぷぷぷと笑われるのは、要は連絡を怠ったロドニーさん自身が悪いんだ。そう思おう。

「あ、でも!」
「はい?」

 鳳翔さんが思い出したように、ポンと手を鳴らす。そんな彼女の傍らには、みんなの分の晩ご飯がつまったお弁当と、水筒がひとつ、置いてある。

「どうかしたんですか?」
「えっと……ひとつだけ」

 鳳翔さんが、水筒を手に取った。その蓋を開き、カップになっている蓋に、中身をコポコポと注ぎ出す。蓋を開いた途端に、鰹だしと味噌のいい香りが漂い始めた。

「……智久さん、どうぞ」

 満面の笑みの鳳翔さんが、僕に差し出したカップ。僕の鼻先に持ってこられた、鳳翔さん自慢の、僕が大好きな、鳳翔さんのお味噌汁。……
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