暁 〜小説投稿サイト〜
チェロとお味噌汁と剣のための三重奏曲
10. あなたと二人で、いられる幸せ
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ものなのかもしれないなぁ。

「いや、観劇とか、他のジャンルの音楽のライブやコンサートと変わらないですよ?」
「とは言っても、どうにも勝手がな……」
「ロドニーさんなんかはイギリスの方だし、クラシックコンサートに行くなんてことは、本国では日常茶飯事ではなかったんですか?」
「私は戦う艦娘だったからな……こういう文化的なことには疎い」
「そんなものなんですか?」
「そんなもんだ」

 開場時間を見ると、午後7時半。会場になるホールの場所も知ってるし、これなら、チェロの練習をして、晩御飯を食べる余裕もある。僕はロドニーさんに『行きます』と返事した後、もしものときのためにロドニーさんとLINEのアカウントを交換し、練習室に入ってチェロの練習を行った。

 練習中、ロドニーさんからLINEが飛んできたことに気付いた。

――晩御飯は、鳳翔がお弁当を作ってくれるそうだ
  開場一時間前に、休憩コーナーで落ち合おう

 おっ。これは朗報だ。コンサートが行われるホールって、確か休憩コーナーみたいな一角があったはずだ。イスとテーブルが準備されていて、飲食も出来るよう、冷たい水や温かいお茶の準備もされていたはず。……つまり、今日も僕は、鳳翔さんの美味しいお弁当にありつけるということだ。これはとてもうれしい。

 一通り今日の練習を済ませた後チェロを片付け、僕は会場へと向かうことにする。一度自宅へと戻り、荷物を置いてから会場へと移動し、ホール入口前、休憩コーナーのテーブルの一つの席へと腰掛けた。

 腕時計を見ると、午後6時20分。ロドニーさんからの連絡だと、そろそろみんなが集まり始める頃だと思うが……。

「遅く……なりました……」

 ……もうね。周囲がワイワイガヤガヤしていてもわかる。どれだけ周りが騒がしくても、その人の言葉に……声に、僕の耳はフォーカスがくっきりと合う。休憩コーナー入口に振り向くと、そこにいる彼女の姿を見た僕の顔は……自分でもわかる。自然と、満面の笑顔になっていた。

「……鳳翔さん!」
「ぁあ! 智久さん!!」

 僕の視線の先にいたのは、鳳翔さん。ピンク色のシンプルな和服に、よもぎ色の羽織を羽織った鳳翔さんが、剣術大会の時と比べてふたまわりほど小さなお重と水筒を持って、息を切らせて立っていた。

 鳳翔さんも、僕を見るなり、満面の笑顔になる。僕は立ち上がり、パタパタとこちらにかけてくる鳳翔さんを迎えた。

「ハァ……ハァ……お待たせしました……」
「いやいや、僕も今来たところです」

 息を切らせた鳳翔さんの手を取って、僕は彼女を椅子へと座らせてあげる。初めて握ったときのように、鳳翔さんの両手はサラサラと心地よく、そしてポカポカとあたたかい。

 そばにある自販機でミネラルウ
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