10. あなたと二人で、いられる幸せ
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「……普賢院智久、昨日の詫びだ」
今日もチェロの練習を行おうと練習室へと足を運んだのだが……入り口のドアの前で、雰囲気がロドニーさんによく似たエジプトのミイラが、薄水色の清掃服を着て待ち構えているという、今後の人生の中でも二度と経験することがないであろう珍事に出くわした。
「えっと……ど、どなたですか?」
「ろ、ロドニー……だ……」
「……なんでそんなミイラみたいになってるんですか? イギリスとエジプトって縁が深いからですか?」
「い、いや……」
自称ロドニーさんのこのミイラいわく……発表会に僕と鳳翔さんを覗き見ていたことの罰として、オーナーからの指示で、昨晩の晩御飯と今朝の朝ごはん、そしてお昼ごはんが抜きになってしまったんだとか。おかげでロドニーさんは昨日のお昼から何も食べることが出来ず、ミイラのように干からびてしまった……とのことだ。
実はバレない程度にこっそりと、鳳翔さんからご飯をもらっていたらしいのだが……やはりそこは、元艦娘。普段と比べて極端に食べられる量が少なく……
「だからといって、ミイラになるほど干からびないでくださいよ……」
「自業自得だからな……し、仕方がないんだ……」
「……そ、そうですか……」
「しかし……おなかすいたなぁ……モップも持てんなぁ……」
聞けば、赤城さんとソラールさんも同様に干からびているらしい。最も、赤城さんはともかく、ソラールさんは別の理由で干からびているみたいだと、ロドニーさん似のミイラは力なく笑う。いや、笑わないで下さいロドニーさん。怖いです。キモいではなく、怖いです。
「じゃあなんでソラールさんは干からびてるんですか?」
「本人曰く『殺られすぎて人間性が限界に……』と言っていた。何かがあったのかもしれないな」
そういい、震えながら一枚の封筒を僕に渡すロドニーさん似のミイラ。正直、覗き見の罰なので本人が言うとおり、自業自得なわけだけど……
「しかし……普賢院智久よ……」
「……」
「ご飯が食べられないって……辛いな……おなかがすくって……悲しいなぁ……」
そうつぶやき、ふるふると震えながら悲しそうに力なく笑うロドニーさん似のミイラ。その姿が、痛々しくて見ていられない。僕は、お昼に食べようと思ってすっかり忘れていた焼きそばパンをバッグから出して、それをミイラに手渡した。
「……よかったら、どうぞ」
「こ、これは……いいのか……?」
「見てられませんよ……」
パキパキと音を立てながらニコリと笑ったミイラは、次の瞬間僕の手から焼きそばパンを奪い去り、袋を必死に開けた後、ガツガツと音を立て、涙を流しながら焼きそばパンを頬張っていた。
そんな非現実的な様子を尻目に、僕は先程ミイラから受け取った封筒を眺める。紙
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