恋女房
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ぜここまでサインが決まらないのかわからずイライラしていた。
「・・・」
「穂乃果!!タイム取れ!!」
花陽が何を投げたがっているかはキャッチャーも指揮官もわかっていた。そしてサインを出す穂乃果の顔があらぬことを考えているのではないかと勘づいた剛は声を張り上げるが、彼女の耳には届かない。
コクッ
長いサイン交換を終えて頷いた花陽がセットポジションに入る。彼女は足を高く上げ、大きく踏み出し腕を振るう。
(来た!!ダブルスプリット!!)
自分の胸元当たりの高さに来た無回転のボールを見て球種を見抜く。彼女は記憶にあるイメージに従うようにバットを振り出す。
カキーンッ
響き渡る快音。ライトの海未がバックして追いかけるが、すぐに立ち止まり打球を見送る。
『入ったぁ!!優木!!起死回生の同点ホームラン!!UTX学園この土壇場で試合を振り出しに戻した!!2人の恋女房がエースの奮闘に応えてみせたぁ!!』
ガッツポーズを見せながらダイヤモンドを一周するあんじゅ。彼女はガックリと項垂れる少女を見ながら笑みを浮かべる。
(相当疲れてたのね。球速が出てなかったから簡単に見極められたわ)
ダブルスプリットはストレートと変わらない球速からフォークと同じくらい落ちてくる。だが、今のボールは他の変化球と変わらない球速しか出ていなかった。
「かよちん!!」
「!!」
二塁ベースを回ったところでセカンドを守っていた凛が投手の元へと駆けていく。心配して他の者も集まっていくと、剛も審判から許可を得てフィールド内に飛んでくる。
「何?どうしたの?」
「何かアクシデントか?」
マウンド上にμ'sの9人、指揮官、審判が集まっているその異様な光景にスタンドの観客たちも騒然とする。
スウッ
「孔明さん?」
「どうしたんですか?」
ざわつくアキバドーム。その中の1人、バックネット裏を陣取っていた孔明は立ち上がると、最前列の方へと歩いていく。
「花陽!!どうした?」
集まった選手たちの中心でうずくまっている背番号1。彼女は肘を抑え、目を赤くしていた。
「ダブルスプリットの投げすぎね」
「投げすぎって・・・まだ5球しか投げてないじゃないか」
UTXベンチからツバサがその様子を見て冷静に述べる。英玲奈からのその言葉にも彼女は淡々と答えた。
「あんな無茶苦茶な投げ方で投げるボール、あの小さな体じゃ多投できるわけないじゃない。だから孔明さんは負担の少ない高速スプリットも教えてくれたのに・・・」
彼女の目から一粒の雫が落ちる。それに気付いた仲間たちは、彼女がまた目の前で仲間のために散っていった勇者を見て悲しんでいるのだと悟り、口を閉ざした。
「全国大会決勝戦の
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