第四十三話 コルベール現る
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この日、マクシミリアンは王宮に訪れエドゥアール王に面会を求めると、政務を行っている執務室まで通された。
「どうしたのだマクシミリアン」
「来月の初め辺りに、カトレアと新婚旅行に行こうと思いまして。その報告に参上しました」
「シンコンリョコウ……とは何だ?」
「結婚した二人が、更なる愛を育む事を名目に旅行する事ですよ」
「また変わった事を……まあ、よかろう。で、何処に旅行するつもりなのだ?」
「アルビオン王国を予定しております」
「アルビオン……か」
エドゥアール王にとってはかつての故国だが、妙に歯切れが悪い。
「どうかされましたか?」
「お前の事だから掴んでいるのだろう? 現在、アルビオン王国内部で反トリステインの機運が高まっている事に」
先年のアントワッペンの反乱の原因の一つに、アルビオン産羊毛がトリステイン産羊毛に取って代わられ、輸入していた商人が大打撃を受けた。という物だった
当然、アルビオンの輸出産業にも大打撃を与え、しかも最近のトリステインの好景気に押され、安くて品質の良いトリステイン産が幅を利かせるようになり。アルビオンの産業は停滞し経済摩擦になっていて、食べていけなくなった農民などは田畑を捨て都市部に流入して犯罪の温床になっていた。
止めとばかりに、トリステインの資本がアルビオンに侵食を始め、アルビオンの国力を下げていた。
トリステインとアルビオンとの間に交わされた同盟関係も、国力の差から以前はアルビオンが主導権を握っていたが、ここ数年で逆転しアルビオン貴族達から反トリステインの機運が高まっていた。
「はい、その情報は掴んでいます。ですから今回のアルビオンへの旅行も、その辺に釘を刺す為の旅行でもあります」
「掴んでいるのなら良いが、具体的にどうやって釘を刺すつもりなのだ?」
「先日、進水したフネを使わせて下さい」
「たしか、蒸気船だったか。お前の肝いりで建造されたフネだ、好きに使うといい」
「ありがとうございます」
トリステイン北部のヴァール川河口に建設が進められた新都市は、好景気も合わさって僅か数年で大都市に成長した。
家臣や官僚たちは、都市の名前を考える際、マクシミリアンの名を取って『マクシミリアム』と名付けられそうになったが、マクシミリアン本人が嫌がって代わりに別の案を提供した。マクシミリアンの案とは、ヴァール川に無数建てられたダムや閘門等といった物と合わせて、『ヴァールダム』という名前で提出した。官僚たちはこれを採用し、新都市の名は『ヴァールダム』となった。
先日、ヴァールダムの造船場で1隻のフネが進水した。
このフネは、蒸気機関を搭載した全長50メイルほどの木造のコルベット艦で、三本マストと空中と海
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