第四十三話 コルベール現る
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上で併用して使えるように艦尾にスクリューとプロペラの両方をを取り付けた。いってみれば日本の咸臨丸の艦尾にプロペラを取り付けた容姿をしていた。
プロペラに関しては、先日マクシミリアンがタルブ村で買い取った零戦のプロペラをモデルに作成した。
艦名は『ベルギカ号』に決定し、近代的な軍組織に改革される空軍に練習艦として編入される事になっている。
マクシミリアンはこの新造艦でアルビオンへ向かうつもりだった。
☆ ☆ ☆
王太子夫妻がアルビオンへ外遊すると発表があり。ベルギカ号の乗組員は僅か1ヶ月程度の短い期間でまともな操船が出来るように猛訓練が命じられた。しかも、ベルギカ号は進水したばかりで艤装もされていない状態だった。
新都市ヴァールダムにある空軍の施設のとある一室にて、見た目は風采の上がらない青年のド・ローテルは訓練計画を立てながら、過密なスケジュールに頭を悩ませていた。
ベルギカ号の艦長に就任した、ド・ローテルはこの無茶な命令に応えなければならなかった。
「乗組員を集めて風石に石炭、食料、衣料品、あと毛布、そうだ最低限の艤装もしないと。それらを終えるのに2週間以上掛かるぞ。出航したとしても訓練期間は精々1週間……」
ぐしぐしと紙に書いては丸めゴミ箱へ捨てる。このサイクルを何度も繰り返していた。
「足りない、とてもじゃないが足りない!」
当初、これまでに無い全く新しい新造艦の艦長に就任したときは、これ以上無いほどの有頂天だったが、王太子夫妻の外遊にベルギカ号を使う為、乗組員を使い物にしなくてはならなくなり、今では辞表を出して田舎に引っ込みたくて仕方が無かった。
「艦長。トランプ提督がお見えです」
守衛が報告してきた。
「入らせて貰うよ」
ひょっこりと白髪の混じった灰色の頭が入ってきた。
「トランプ提督、助けて下さい! こんな無茶苦茶なスケジュールどうやったって無理ですよ!」
「苦労していると思ってな、お邪魔させて貰った。」
若いド・ローテルと、いかにもベテランといったトランプ。二人の関係はいわゆる師弟関係だった。
「そう思うんだったら、何とかして下さいよ」
「心配するな。風石に石炭、その他諸々1週間以内に出航できるように手配してある」
「助かります!」
心底助かった様子で、ド・ローテルは頭をボリボリとかいた後、何度も頭を下げた。こうして、ベルギカ号の慣熟訓練の目処は立った。
ド・ローテルは、戦略や戦術など『いかにして勝つか』の方法を実践するのは得意だったが、デスクワークは苦手だった。
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