綻び
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せっかく打ち取ったのに」
「仕方ないわ。でも次は頼むわよ」
「ええ、もちろんよ」
慣れない捕手を懸命に頑張っているのはみんなわかってる。ここで代えれば楽になるかもしれないが、英玲奈も万全とは言い難い。ここは彼女の能力に賭けようと西村も動かない。
(次の矢澤さんは小技も使える。ここはストレートをとにかく厳しくいかなきゃ)
内角にストレートで詰まらせに行く。一塁ランナーは関係ない。三塁ランナーを返されれば負けが目の前に迫ってしまう。足を大きく上げて腕を目一杯振って投じたその球は・・・
「に“ご!!」
打者であるにこの背中に直撃した。
「「あ・・・」」
予想外の出来事に口を開けてあんぐりしているバッテリー。2人はすぐに正気を取り戻し謝罪すると、にこは泣きそうな目で2人を制止してから一塁へ向かう。
(お前ら何やってんだよww)
満塁のピンチにも関わらず西村は笑いを堪えずにはいられない。ぶつけたらおもしろい場面とは思ったが、本当にぶつけるとは思ってなかったため必死に声を殺して笑い声が漏れないようにしていた。
(ちょっとツバサ、ここでそれはなくない?)
(ごめんごめん。力入りすぎちゃったわ)
指揮官同様に笑いを堪えているせいで顔がニヤニヤしているツバサとあんじゅ。2人は深呼吸して心を落ち着けると、次の希を見据える。
(前の打席はヒットだったけど、あれはスライダーの投げ損ないだったもんね。別に警戒する必要はないわ)
まずは真っ直ぐでカウントを取りに行く。希も死球の後の初球とあって狙っていくがタイミングが合わず空振り。
(次は・・・変化球かな?)
変化球の中でも色々あるが、ここである球種が脳裏を過った。あんじゅはそれを出すと、ツバサは驚いたような顔をするが、楽しそうな表情へと変化しうなずく。
ビシュッ
(来た!!真ん中!!)
失投に食らい付く希。だが、手元でボールがキュンッと胸元に食い込んできた。
(あかん!!これは・・・)
ガッ
バットの根本で捉えたボール。それはピッチャーの正面に弱々しく転がる。ツバサはそれを冷静にキャッチすると、一塁方向へと走っていきファーストの長沼にトスする。
「つ・・・ツーシーム・・・」
ストレートばかりで忘れていたが、彼女には打者の手元で変化させるこの球種があった。冷静さを取り戻した少女の前に無失点に抑えられた音ノ木坂は、1点差のまま9回の守備へと到達した。
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