8. あなたに勇気を出してほしくて
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響き、今の練習室には、僕とロドニーさんの二人だけ。練習室にほんのりと西日が差し込み、今、室内はうっすらとオレンジ色に染まりつつある。
カタカタと身体を震わせる僕の前に、ロドニーさんが立った。だけど、身体を縮こませている僕は今俯いているから、僕の目に映っているのは、床板とロドニーさんの足だけだ。
「……私を見ろ」
「へ……? なんでですか?」
「いいから。私の顔をまっすぐ見ろ」
言われるまま、渾身の力で顔を上げる。頭を動かすことすら一苦労だ。僕の身体は今、ガッチガチに固くなってしまっている。やっとのことで、ロドニーさんの顔を見た。
「うう……何……ですか……?」
言葉すら、満足に発することが出来ない。口もこわばっている……自分の意気地の無さが嫌になる。
ロドニーさんが何をやるつもりなのかまったく分からず、ほぼストップしている思考を必死に回そうとしていたら……
「……普賢院智久」
「……は、はい……」
ファサッという軽く心地いい音を響かせ、ロドニーさんが、自分の髪の編みこみを解いた。彼女はいつも、そのキレイな金髪をふんわりとキレイに編み込んでいる。その髪をロドニーさんは解き、とてもキレイなストレートの、白色をほのかに帯びた金髪を下ろした。
ロドニーさんが気持ちよさそうに頭を振り、そのたびに、彼女の髪が優しくなびき、そして輝く。サラサラと心地いい音が聞こえてきそうなほどしなやかな彼女の髪が、周囲に輝きをこぼしながら、キレイにまとまった。
そして次の瞬間ロドニーさんは、今まで見たことのない、ふんわりと優しく、柔らかい微笑みを、僕に向けていた。
「私は、お前が好きだ」
「……へ」
「鳳翔は、お前の良さをよく知っていると言ったが……私も、お前の良さはよく知っている」
「……」
「……普賢院智久。お前は、ずっと私の決闘の申し出を反故にしていたな」
「はい……」
「にもかかわらず、困っていた鳳翔のために私と戦った。恐れながらも覚悟を決めたお前は、気迫ではこの私に、一歩も遅れをとることはなかった」
「……」
「私に挑発されながらも動じない強さ……鳳翔のために私との戦いを決めた優しさ……恐れながらも私に立ち向かった勇気……私は、そんなお前が好きだ」
差し込む夕日に照らされた、ロドニーさんの顔を見つめた。少し顔を動かすたびに髪が揺れ、そのたびにサラサラと心地いい音が聞こえてくるようだ。そんな彼女の表情はとっても穏やかで……今までの、賑やかで、うるさくて、そして雄々しいロドニーさんからは、想像出来ないほど、優しく、ふんわりと柔らかい微笑みだ。
ロドニーさんのしなやかな右手が、僕の頭に伸びてきて、前髪に触れた。その手は、あの日僕を気絶に追い込んだ一撃を叩き込んだ手だと
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