第27話 レーティア・アドルフの涙 Ev10
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の予想では逆転の可能性が五割あるんだ。
勝算があるのに逃げるわけにはいかないだろ?」
「えっ……そうなんですか?」
「そうだ。伏見もゲッベルスもデーニッツも心配し過ぎだ。
すぐに盛り返して凡人たちの予測なんて吹き飛ばしてやるさ!」
「あ、失礼しました。総統は宇宙一の天才ですもんね」
「うん……そうだ……大丈夫さ……大丈夫……私なら……絶対に大丈夫」
「……総統?」
「っと、すまない。考え事をしていた。
次は久しぶりに伏見を交えて三人で通信をしよう。
そのときは伏見をドクツに招待した際に案内する観光地の話でもしようじゃないか。
それじゃあ、また通信する。グーテナハト」
「……グーテナハト」
ピッ……
「大丈夫ですよね、総統……」
しかし、つぶやきを繰り返すアドルフの顔が脳裏に浮かび、
着替えかけのパジャマを脱いで軍服に服を着替えたデーニッツは
夜分にも関わらず伏見の部屋を目指した。
デーニッツ→☆
――――レーティアの部屋――――
「……はあっ……ふうっ……」
デーニッツとの通信を切った後、
アドルフは自らの体を抱きしめた。
腕が、肩が、国を一人で背負うには小さな身体が震えている。
額を、うなじを、冷えた汗が筋となって伝う。
体調のせいなどではない、極度の緊張のためだ。
「やれやれ……デーニッツを誤魔化すことができたかは……半々だな」
最後まで平静を保つことができたのかは自信がない。
手には握りしめられた緊急通信のメモ書きが残されている。
オットー少佐から届いた惑星パリ陥落の急報だ。
アドルフは一人で考える時間が欲しいと部屋に籠った。
デーニッツとの通信は気分転換のためもあったが、
最後にデーニッツの声が聞きたくなったのだ。
「伏見の予想ではドクツ逆転の確率は一割。
私の予想ではドクツ敗北の確率は九割。一緒だな……」
逆転の可能性が半々なんていうのは嘘だ。
ハッタリなんて非合理的な言葉を使うとは、
以前なら自分らしくないなと思っただろう。
いつの間にか随分とゲッベルスに影響されているのだと気が付いた。
「一割の可能性にかけるとしたら……あの兵器を使うしかない……
日本は……知らないはずだ……ドクツでさえ開発を知る者は少数……
いや……あの兵器の理論上の威力を知るのは……私だけだ。
伏見は……どうだろうか……
もし、宇宙を破壊する兵器が、この手にあったとして……使えるのか……」
迫りくる敗北への怖れ、大いなる殺戮の怖れ、
アドルフの胸に、二つの想いが渦巻いていた。
「レーティア、もう入っていいかしら?」
「うん、大丈夫だ」
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